汚染水放出しないで!汚染水対策は「ざる」でもいいの?

3月12日の午後に汚染水問題についての緊急政府交渉を参議院議員会館にて実施しました。市民側は、ハイロアクション福島から人見やよいさん、うのさえこさん、関西、首都圏から約50名、福島みずほ議員、川田龍平議員も駆けつけました。政府側は、原子力規制庁の福島第一原発事故対応室、高浜審査を担当したPWR担当、資源エネルギー庁の廃炉事業担当、そして東電(本店原子力センター)も出席しました。

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◆K排水路問題…流出は事故直後から・汚染源は特定されていない

K排水路問題では、まず汚染源が特定されているのかを確認しました。東電は、2号機大物搬入口屋上のたまり水が原因であるが、今後類似箇所について確認する予定だと回答、規制庁は、まだ汚染源は特定されていないとの認識を示しました。東電は汚染源が特定されたかの口ぶりでしたが、調査の範囲について確認すると、建屋周辺は線量が高く、部分的な調査しかしていないとのことでした。それでは原因は特定できないのではないかと聞くと、その通りだと。また、この流出は4年前の事故直後から続いているのではないかという問いにも、その通りだと回答しました。市民側からは、線量が高い場所の調査は慎重にやって欲しい、汚染源が特定され、対応も済んだかのような説明はやめてほしい、その上で、少なくとも、汚染源の特定と排水路から海洋への流出を完全に止めるまで、再稼働の手続きは止めるよう求めました。

K排水路の放射能データについて、東電が連続測定し、雨のたびに告示濃度限度を超える高いレベルを観測していたにもかかわらず、公開せず、規制委側も1年あまりも放置していました。この問題で規制庁に、昨年2月26日の原子力規制委員会決定(規制要求)で、排水路の水も液体放射性廃棄物として規制すると決めており、確認を怠っていた規制委側にも問題があるのではないかと質しました。すると規制庁は、昨年2月の規制要求は、来年度から実施することになっていて1年の猶予期間があるのだとの説明がありました。しかし、それだから放置しても構わないということにはならないはずです。規制委側に本当に海洋汚染を防止する姿勢があるのか疑問だとの声があがりました。

◆タンク汚染水…規制委の放出方針を批判

続いてタンクの汚染水問題です。タンク中の汚染水の現状ですが、処理前のものが約20万トン、ストロンチウムの処理をしたものが約5万トン、ALPSの処理をしたものが約33万トンあります。東電にまず、ストロンチウムの処理水の放射能レベルを確認しました。処理前のストロンチウムが約1000万ベクレル/リットル、処理後が約100万ベクレル/リットルでした。下がってはいますが依然高い値です。ALPSの処理でもトリチウムをとることはできません。処理後の水も汚染水として扱うべきです。

現状でタンク中の汚染水は60万トンを超えており、日々増え続けています。その中には1000兆ベクレルを超えるトリチウムが含まれています。事故前の放出実績の約500年分に相当します。市民側からは、トリチウムが大量であることと、事故後既に、セシウムやストロンチウムを含む大量の放射能が湾内外に流出していることを踏まえ、これ以上は放射能を海洋に流さないよう強く求めました。

この問題で規制委員会は、タンクのリスクが高いという理由で、処理水については、トリチウムを薄めて海洋に放出すべきという方針を示しています。東電や資源エネルギー庁ですら慎重姿勢であるのに、規制当局が積極的に流せというのはどういうことでしょうか。規制庁はタンク保管のリスクが高いとの持論を繰り返しました。リスクの中身を聞くと、タンク建設の際に労働者がけがをしたり死者が出たりするかもしれないということでした。それと放射能放出のリスクを比較することがそもそもおかしいのではないでしょうか。それに住民や漁業者を無視していいのでしょうか。市民側はこの方針を撤回するよう改めて求め、いわきや福島でも、住民との交渉や説明会を開くよう求めました。地元での説明会の要請については、東電は了解し、規制庁は持ち帰って検討することになりました。

◆高浜原発の汚染水対策…シルトフェンスの性能確認せず!?ざるでもいいの??

再稼働が問題になっている高浜原発の汚染水対策について、市民側は、まず、格納容器が破損した場合の放射性物質の拡散を抑制するための設備を要求する新規制基準55条について、ここで想定される放射性物質が気体か液体かは問わず、汚染水の状態での拡散の抑制も含むこと、福島原発事故のような汚染水問題が発生する可能性があり、これが事故直後に発生する可能性もあることを確認しました。その上で、高浜原発では55条が要求する設備が何にあたるのかについて聞くと、シルトフェンスだという回答でした。これは驚きの回答でした。

というのも、シルトフェンスが放射能拡散抑制の役に立たないことは、福島原発事故の現状からも明らかであり、その性能については、福井県の原子力安全専門委員会でも問題になっているからです。そこで、シルトフェンスの性能について確認したのかと聞くと、確認していないと回答、さらに有効性は確認しなくともよいと強弁しました。それでは、ざるでもなんでもよいことになっています。まさにざる審査であることが明らかになりました。これで再稼働を許すことなどとてもできません。市民側は、シルトフェンスの性能を確認して審査をやり直すことを要求しました。

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