6月9日(月)午後に、原子力規制委員会・規制庁に対し、川内原発の高経年化審査に関する要請行動を行いました。

要請書と記者会見資料は以下の通りです。

川内原発高経年化要請書20150706

高経年化要請セット

2015年7月6日
原子力規制委員会委員長田中俊一様
原子力規制庁御中

原子力規制を監視する市民の会
川内原発30キロ圏住民ネットワーク

川内原発1号機の高経年化対策の審査に関する要請書

川内原発1号機について九州電力は、7月7日(火)にも再稼働に向けて燃料装荷を行うとしています。川内原発1号機は、昨年7月3日をもって30年が経過し、今年7月4日には32年目に入りましたが、原子炉等規制法に基づく運転開始30年の高経年化対策に関する保安規定の審査が中途であり、まだ認可されていません。川内原発1号機の高経年化対策は、手続き上も安全上も問題があり、直ちに再稼働に向けた作業を中止すべきです。

以下要請します。

要請事項

一.川内原発1号機は高経年化対策に関する保安規定の審査が未了であり、少なくともこれを終えるまでは再稼働をさせないこと
一.7月7日に予定されている燃料装荷の作業を中止させること。燃料装荷を含め、再稼働に向けての作業を中止させること
一.高経年化に関する保安規定の審査に際しては、高経年化対策について問題を指摘している科学者・技術者を含めて、外部有識者から意見を聞く場を設け、反映すること。広くパブリック・コメントを募集し、反映すること
一.高経年化に関する保安規定の審査に際しては、改めて現場検証を実施し、保安活動の状況確認だけでなく、劣化の状況の確認・評価を実施すること
一.福島第一原発事故を教訓とし、これまで以上に慎重かつ念入りに審査をすること
一.原子力規制委員会、規制庁における、評価、審査、認可、検査と安全性確保との関係性、責任について、法的な観点も含めて明らかにすること

要請理由

■30年を超過した手続き上・安全上の問題

実用炉規則82条は、30年を経過する前までに、高経年化技術評価を実施し、長期保守管理計画を策定することを要求しています。これは、事業者による申請だけでなく、規制当局による審査と認可も含んでいると解すべきです。実際、原子力安全・保安院時代を含め、これまではそのように運用されてきましたし、そのことを示す文書もあります※1。

ところが原子力規制庁は、30年が経過する前に、九州電力による保安規定変更の案の申請さえなされていれば問題なく※2、認可までに何年かかろうと法的には問題ない、「規則上、結果の是非について要求していない」とも述べています※3。申請さえすれば中身は何でもよいというのでは、何のための審査なのか、何のための規制なのかわかりません。このまま再稼働が容認され、高経年化が原因で事故が発生した場合、事故のレベルとは関係なく規制委員会、規制庁の責任は極めて重く、存在そのものが問われることになります。

また規制庁は、安全上も問題ないとしており、その理由として、保全活動が継続していること、冷温停止状態が継続しており、安全上直ちに影響を及ぼすものでないことを挙げています※2。しかし、影響が及ばないとする期間や条件を示していませんし、根拠も明らかにしていません。「特例として手続きの延長を認めていた」(6/16西日本新聞)「特例として猶予期間を設けている」(6/16電気新聞)と報じられており※4、規制庁担当者も「延長」と述べています※2が、そのための手続きがとられた形跡はありません。

■認可なしに再稼働はできない

原子力規制庁は、高経年化対策の手続きは再稼働とは無関係とし、再稼働前に審査が終わらなくても問題はない※3としています。これは、30年を超過する際に、審査継続の安全上の理由に、冷温停止状態の継続を挙げている※2ことと矛盾します。原子力規制委・規制庁は、少なくとも審査を完了するまでは、再稼働させないことを明確にすべきですし、現場検証の妨げとなりかねない燃料装荷などの作業は中止させるべきです。

■現場検証で劣化の状況について把握すべき

現場検証については、補正申請の審査に際しても改めて実施すべきです。その際に、保全状況の確認だけでなく、劣化の状況についても確認する必要があります。場合によっては、追加の点検が必要となることも考えられます。福島第一原発事故が32~39年の高経年化が進む原子炉で発生したことからしても、これまで以上に慎重な対応が必要です。なお、福島第一原発はいまだ線量が高く、高経年化による影響評価が不十分であることは規制庁も認めています。

■外部有識者の意見聴取やパブリック・コメントの実施を

高経年化対策については、評価対象選定が不十分、サンプルが極端に少ないこと、応力腐食割れを把握するための超音波探傷試験の信頼性、原子炉容器の中性子脆化の評価の信頼性など、さまざまな問題が指摘されています。保安規定の審査に際しては、こうした問題を指摘している科学者・技術者を含めて、外部有識者からの意見聴取を実施すべきです。高経年化対策検討チーム会合の冒頭で、規制庁担当者は、実施する可能性について言及しています。また、広く意見を募集する手続きを踏むべきです。

※1  原子力安全・保安院高経年化技術評価に関する意見聴取会第一回会合配布資料
※2  2014年7月2日原子力規制委員会定例会合議事録:坂内安全規制調整官の発言
※3  2015年6月29日市民との交渉(参議院議員会館)における中桐安全規制管理官(PWR担当)付補佐の発言
※4  2015年6月16日付電気新聞、西日本新聞の報道

連絡先
原子力規制を監視する市民の会
〒162-0822新宿区下宮比町3-12-302/TEL03-5225-7213/FAX03-5225-7214
090-8116-7155/阪上武