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みなさまへ

本日行われた安定ヨウ素剤の配布を求める院内集会&政府交渉で大きな成果が得られました。

≪政府交渉速報≫
内閣府:健診の活用によりひたちなか市のゼリー状ヨウ素剤の配布を認める!

<茨城県ひたちなか市の配布方法を国と県が批判>

茨城県ひたちなか市は、PAZ(5キロ圏)の外を含む市内全域での安定ヨウ素剤の事前配布を実施しています。

県と国は、ひたちなか市の配布方法が適切でないとし、県が抱えているひたちなか市分のPAZ(5キロ圏:1万5千任)の事前配布用の安定ヨウ素剤の引き渡しを拒否し、UPZ(30キロ圏:14万2千人)の備蓄用の安定ヨウ素剤についても、これを事前配布用に用いないことを条件にしています。

そこでひたちなか市は市の予算で独自に安定ヨウ素剤を購入して事前配布を行っています。ところが、3歳児未満用に新たに開発されたゼリー状の安定ヨウ素剤については市販されていないため、独自の配布ができない状況にあります。

ひたちなか市の3歳児未満の子どもたちは、PAZ(5キロ圏)を含めて、ゼリー状の安定ヨウ素剤が受け取れないという異常な状態となっています。これでは子どもたちの安全を守ることはできないし、人権が侵されているといってもいい状況です。

ひたちなか市の配布方法は、郵送されたチェック票に記入した上で薬局にもって行き、薬剤師の説明を受けて受け取るというものです。

<ひたちなかがダメなら東海村もダメということに>

今日の交渉で、この配布方法のどこに問題があるのか聞きました。対応した内閣府政策統括官(原子力防災担当)付参事官補佐の林田浩一氏は、安定ヨウ素剤は薬局医薬品であり、住民全員が、医師による服用の適否について判断を受けるのが薬事法による原則である、ひたちなか市のやり方は、指針や規制庁の解説文書(ガイドライン)に照らしても適切な方法ではない、解説文書には、PAZの外で事前配布を行うには「PAZと同様の方法」で行うと書かれており、ひたちなか市もPAZの東海村と同じ方式で実施すればよい、そうでなければ財政的な措置はとれない、と回答しました。

では東海村の配布方法ならよいのか、昨日茨城県の薬務課の担当者に話を聞いたが、説明会の場で配布、医師は建物のどこかにいるというだけで、説明するのもチェック票を確認するのも薬剤師、これで住民全員が医師による服用の適否について判断を受けたといえるのか、と聞きました。

林田氏は、東海村の具体的な状況は知らないが、医師が統括的に判断すればよいと回答。東海村のやり方は各地で実施されているもので、知らないはずはありません。これで本当に医師による服用の可否を判断したと言えるのか、もしひたちなか市がダメなら東海村もダメではないか、と繰り返し質すと、配布しやすいように厚労省と協議したとし、原則から外れていることを認めました。

<住民や子どもたちの立場で考えて欲しい>

医師による服用の適否の判断については、ガイドラインのどこにも書いていません。もし本当にこれが必要であれば、ガイドラインに記載があるはずです。林田氏と同席した原子力規制庁の2人の役人は、書類をめくり、東海村を正当化しひたちなか市を否定する言い訳を必死に探しているようでした。そんなことをせずに、住民や子どもたちの立場に立って、どうすればひたちなか市でも配布できるかを考えて欲しいと訴えました。

<健診を活用することでゼリー状の配布を認めると内閣府>

ひたちなか市のやり方は、医師が関与していないわけではありません。配布している薬局はすぐ近くに病院や診療所がある場合が多く、配布時に健康不安があれば、市の負担で医師の診察が受けられるようになっています。市民側から、健康診断を活用してはどうかという提案があり、ひたちなか市では、3歳児未満については、1歳6か月健診や3歳児健診の際の配布を検討しているとの新聞記事が紹介されました。

すると、内閣府の林田氏は、1歳6か月健診や3歳児健診を使うのあれば、PAZ内でのゼリー状の事前配布を認めることができると述べました。これは、県が抱えて引き渡しを拒否しているゼリー状の安定ヨウ素剤を引き渡すということを意味します。そうなれば、ひたちなか市は、財政措置をとることなく、ゼリー状を子どもたちに配布することができます。林田氏は、PAZ内という条件を付けましたが、PAZ内の事前配布を認めれば、PAZ外のUPZ(30キロ圏)でも事前配布を否定する根拠がなくなります。

薬局を活用したひたちなか市の方法は特に人口の多い地域で有効です。ゼリー状だけでなく、大人用の丸剤についてもこの方法が認められると、全国的にも大きな意味をもつと思いますし、PAZ(5キロ圏)外での事前配布に大きく道を開くことになります。今日はその一歩となる成果が得られたと思います。

阪上 武(原子力規制を監視する市民の会)