みなさまへ

国・東電が海洋放出を目論んでいる福島第一原発のトリチウム汚染水に基準値を超える放射性ヨウ素などが入っていたことが明らかになったと8月20日付で各紙(共同配信?)が報道しています。

報道によると
2017年度に汚染水をALPSで浄化した後に測定した結果、ヨウ素129(半減期約1570万年)が1リットル当たり最大62.2ベクレル検出され、法令基準値の9ベクレルを上回った。ルテニウム106(半減期約370日)が最大92.5ベクレル(基準値100ベクレル)、テクネチウム99(半減期約21万1千年)が最大59.0ベクレル(基準値1000ベクレル)が検出された。とあります(東京新聞など)。朝日新聞には、ストロンチウム90は141ベクレル(基準値の約5倍)とあります。

ヨウ素129について、東電のHPからデータを探してみると

以下、福島第一原子力発電所における日々の放射性物質の分析結果
http://www.tepco.co.jp/decommision/planaction/monitoring2/2017/treatment_facllity/index-j.html

の増設多核種≪出口≫(01)8月17日以降の計画による結果
http://www.tepco.co.jp/decommision/planaction/monitoring2/2017/images/1701250.csv

の9月18日のデータに、ヨウ素129 0.06224Bq/㎝3 の数字がありました。法令基準値の約7倍の値です。

朝日新聞によると、東電は「吸着するフィルターの性能が落ちていたことも考えられる」としています。

前後の数値をみると、この時期は総じて高い傾向にありますが、ずっと小さい数値も混在しています。同じ日でも時間帯により、高かったり低かったりしています。

エネ庁が設置した汚染水処理対策委員会の2014年の13回の資料3-2
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/140725/140725_01h.pdf

をみると、APLSの前段階での試験では、ヨウ素がほとんどとれず(P11)、工程に銀ゼオライトを追加して、追試をおこなったところ、よくとれた(P16)ということになっています。告示濃度の100分の1のオーダーです。

原液の濃度が試験よりもずっと濃かったか?あるいは何等かの理由で銀ゼオライトが機能しなかったか?外したしまったか?

朝日新聞によると、東電は、数値はホームページで公表しており、国が定める敷地境界の放射線量(年間1ミリシーベルト)も超えておらず、「保管上は問題はない」としているが、「今後はわかりやすくお知らせしていきたい」とコメントしたとのことですが、そんなことで済まされる問題ではありません。

トリチウム汚染水については、エネ庁が汚染水処理対策委員会とその下の小委員会で検討し、海洋放出の方向で調整しようとしており、8月30日と31日には、説明・意見聴取会を予定しています。規制委員会の更田委員長も一貫して海洋放出を主張しています。

汚染水処理対策委員会や小委員会の議論は、トリチウム汚染水の取り扱いについて、トリチウム以外の各種はALPSで除去されることが前提となっており、ヨウ素129などの件については、議論の対象になっていません。説明・意見聴取会の資料にもありません。一体エネ庁はこの状況を把握していたのでしょうか。規制委員会はどうでしょうか。

いずれにしろ、トリチウム汚染水の取り扱いについては、説明・意見聴取会の開催の前提も崩れた状況だと思います。

ヨウ素129の危険性については以下が参考になります(美浜の会)
http://www.jca.apc.org/mihama/reprocess/rokkasho_series7.pdf

阪上 武