みなさまへ

関電火山灰に関する審査請求について、規制委から棄却の通知がきました。審査請求を通じて、新知見により危険性が明らかになっても原発を止めない規制委の姿勢が明らかになりました。

裁決書 執行停止申立てに対する決定

●審査請求の経緯

規制委は、2018年12月17日の火山灰濃度規制の強化にともなうフィルタ交換手順等を定めた関電大飯原発及び高浜原発保安規定の認可処分を下しました。この認可処分は、火山灰の厚み10センチを前提としていました。

ところが同じ時期、京都の火山灰層に関する知見により、関電原発の火山灰の厚みは25センチ程度にすべきであることが明らかになりました。規制委は同年12月12日に関電に対し、原子炉設置許可の変更の前提となる報告聴取命令を出していました。

火山灰の厚みが2.5倍になれば、火山灰濃度も2.5倍に。するとフィルタが目詰まりする時間は2.5分の1となります。交換手順を変えなければいけません。しかし規制委は、認可期限が年末に迫っていたことから、原発を停止させないために、ダメだとわかっている10センチを前提とした保安規定に認可を下したのです。

この認可処分が、火山などの外部事象に対しても安全性を保つことを要求する基準規則に違反するとして、2019年3月13日に、行政不服審査法に基づく審査請求を行いました。総代は私と島田清子さん、児玉正人さんの3名、審査請求人として130人余りのみなさんに加わっていただきました。多くのみなさんにご協力いただきました。ありがとうございました。

●審査請求と執行停止の申し立てはいずれも棄却

認可の取り消しを求めるとともに、原発の安全性が維持できない状況であることから、原発の停止を求める執行停止の申し立ても同時に行いました。今般これをいずれも棄却するとの書面が送付されてきました。

棄却の理由は、1.基準規則は設置許可には適用されるが保安規定認可には適用されない、2.当面は既許可の基準(10センチ)で認可を行うと審査会合の場で決めた、3.執行停止命令については緊急性が主張されていない、という非常に形式的なものでした。緊急性についてこちらは、火山噴火が予測できないことから、いつ噴火してもおかしくないと主張しましたがそれには触れていません。

●バックフィットといいながら原発を止めない規制委

私たちは、間違っていることがわかっていながら認可を下したことについて、手続上の問題だけでなく、実際に火山噴火があった場合に対応できないことから、安全上の問題としても提起しました。

審査の過程で、問題の2018年12月の時期に、原発を止めないために、火山灰の厚みが基準不適合であるとの認定を先送りにする案を秘密会合で検討していたこと毎日新聞のスクープで明らかになりました。

規制委は、2019年6月にようやく、設置許可の基準不適合により、再審査のバックフィット命令を下しました。ところがここでも原発を止めようとしません。

大山は活火山ではないから当面の噴火はないとの理由ですが、決判断基準も不明で、専門家から意見を聞くこともしません。これは口頭意見陳述会の場でも確認したのですが、規制委は、原発の停止を求めるか否かについて検討する会合を一度も開いていませんでした。

福島原発事故は、津波について新知見への対応を、原発を動かしながらだらだらと検討する間に起きてしまいました。その反省から、新知見に対する対応を原発を止めて行うことにしたはずです。それがバックフィットであったはずです。

実際には、バックフィット命令はこの関電のケースしかなく、ただ一つのケースについても原発を止めない姿勢は福島原発の事故前となんら変わりません。ぜひみなさんで批判を集中しましょう。

阪上 武(総代:原子力規制を監視する市民の会)