みなさまへ
本日(7月29日)原子力規制委員会は、日本原燃六ヶ所再処理工場の事業指定変更申請に許可を下しました。危険極まりない再処理工場の本格運転に向けた作業が一つ進んでしまいました。
この間、原子力規制庁と交渉を重ねてきた5団体の連名にて、共同抗議声明を発出しました。
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2020年7月29日
共同声明 六ヶ所再処理工場の許可に抗議する
本日、原子力規制委員会は、日本原燃が青森県六ヶ所村で建設中の再処理工場の事業指定変更申請に許可を下した。私たちはこれに強く抗議する。
六ヶ所再処理工場では最近になってアクティブ試験(試運転)で生じた放射性廃棄物の不適切管理が発覚した。私たちはこの件で7月21日に交渉をもったが、その中で、現地事務所では毎日のように不適切情報があがっていること、ガラス固化建屋内でずさんな管理が続けられているガラス破片について、これがガラス固化溶融炉の構造的な欠陥により生じたことが明らかになった。ガラス固化は失敗に終わり、危険な高レベル廃液は固化できずにいまでも貯槽に保管されている。この状況で再処理事業を進めると、ますます危険性を高めることになる。
ガラス固化の構造的欠陥は安全上重要な基本設計に関わることであり、今回の審査の対象とすべきものであった。ところが規制委はアクティブ試験の評価を行わず、使用前事業者検査など、後段の規制に先送りするとしている。審査書の中で、「アクティブ試験における再処理施設の運転及び保守の経験を有している」とし、これを、原燃が「再処理の事業を的確に遂行するに足りる技術的能力」を有する根拠としているが、審査もせずにこのような判断を下すことはできないはずだ。ガラス固化における欠陥、相次ぐトラブルと日常的な保安規定違反、廃棄物のずさん管理等々、原燃による運転と保守の「経験」は、逆に、原燃に再処理工場を運用する技術的能力がないことを明らかにしている。
交渉ではプルトニウムの回収率や未回収分の管理状況について質したが、日仏協定の機微情報と位置づけられているとして明らかにされなかった。危険な核分裂物質についてずさんな管理が行われていたとしても、私たちは実態を知ることすらできない。
福島第一原発のサイトのタンクに溜まる大量のトリチウムを含む汚染水について、国の海洋放出の方針に対し、漁業者をはじめ各地の人たちが反対の声を上げている。六ヶ所再処理工場が稼働すれば、これを大きく超えるレベルのトリチウムが海洋に放出される。再処理工場の海洋放出では、原発では定められている濃度限度を排除した基準を設定することで、出てきたトリチウムは高い濃度のまま、垂れ流しとなっている。これは、放射能放出に際して、放射能を低減する設備を要求する事業指定基準規則第21条に反する。こうした点からも許可はできないはずだ。
再処理工場は、全国の原発から集めた使用済み燃料を硝酸で溶かしたうえで、プルトニウムとウランを回収する施設だが、日常的な放射能汚染に加えて、人が近づけないような高レベル廃液を生み出し、重大事故により、破局的な放射能汚染をももたらしかねない。そのうえ、もんじゅは廃炉が決まり、「核燃料サイクル」は破綻、国際的にも日本のプルトニウム保有に厳しい批判がある中、10兆円を超える巨費を投じてまで再処理工場を動かす意味は完全に失われている。なにより一刻も早い脱原発の実現を求める多くの人々の願いを踏みにじるものである。私たちは、今回の許可処分に抗議すると共に、改めて再処理工場の許可の取り消しと再処理事業からの撤退を求める。
核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団(青森県)
三陸の海を放射能から守る岩手の会(岩手県)
国際環境NGO FoE Japan(東京都)
原子力規制を監視する市民の会(東京都)
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(大阪府)
連絡先 原子力規制を監視する市民の会 東京都新宿区下宮比町3-12-302 090-8116-7155阪上