原発の運転期間40年ルールを守れ!老朽原発の運転延長やめて!規制委宛てパブコメのタネ

高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)に対する科学的・技術的意見の募集の実施について
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=198022209&Mode=0

対象文書 高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000245404
参考文書
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000245406

意見提出期間 2023年1月20日(金)まで
問合せ 原子力規制庁原子力規制部原子力規制企画課 03-5114-2109(代表)

批判のポイント*********

・意見募集の募集要項に「運転期間に関する定めが原子炉等規制法から他法令に移される場合でも高経年化した発電用原子炉に関する安全規制を適切に実施できるようにするため、法的な枠組みを原子炉等規制法に定める予定となっております。」とあるように、この意見募集は、①運転期間に関する定めを原子炉等規制法から他法令(電気事業法)に移したうえで、②高経年化した原子炉に関する安全規制を見直すこととしており、この2点について原子炉等規制法を改定することが前提になっています。

・意見募集の対象となっている文書では、①については前文に簡単な事情説明があるだけで、箇条書きとなっている本文は専ら②についての記載となっています。しかし、①も非常に重要ですので、意見は①についても提出するのがよいと思います。その場合、運転期間の定め(40年ルール)は、対象文書が言うような「利用政策の判断」などではなく、原発の耐用年数が40年であるなどの理由で「安全規制」の一環として原子炉等規制法に盛り込まれたというのが事実であり、これを規制側の原子炉等規制法から利用側の電気事業法に移す根拠はないこと、安全をないがしろにするものであると同時に、「利用と規制の分離」という福島第一原発事故の教訓を踏みにじるものであること、今回の動きについて2022年7月から原子力規制庁と経済産業省などとの間で秘密裏に事前協議が行われており、「分離」どころか「癒着」が進んでいること、運転期間の定め(40年ルール)は規制委こそが厳格に順守しなければならないものであること、などがポイントになると思います。

・②の高経年化した原子炉に関する安全規制について、従来は、40年目までに20年の延長を前提に1回だけ行う運転期間延長認可制度と30年目から10年ごとに行う高経年化技術評価の2つの制度があり、どちらも規制委による審査がありました。新たな安全規制案では安全規制としての運転期間制限をなくした上で二つの制度を一本化することとしています。審査のタイミングなどは従来と変わらず、事業者側に提出を求める文書が追加されます。追加されるのは、劣化の点検の方法と結果及び技術評価の方法などです。技術評価についてこれまでは結果しか要求していませんでした。結果だけをみてすべての審査を通してきたことになります。

・新たな安全規制案は、事業者に対して厳しくするというよりは、規制側のこれまでの審査の欠陥をこっそりと補うものとなっています。対象文書には、新たな制度への円滑な移行を図るための措置についての記載がありますが、規制委は新しい安全規制云々の前に、これまでの審査の欠陥を認めた上で、最新の知見を踏まえた判断基準の再検討と従前の審査についての総点検を行わなければなりません。それまでは老朽原発をすべて停止すべきです。

・規制委は、今後老朽化が進むほど、安全性の立証がますます困難になることを認めています。また、規制委は、立証責任は事業者側にあると繰り返していますが、問題は規制委側にあります。判断基準も不明確な状況で、40年目についても審査しきれていないというのが実情です。老朽化が進むほど審査による安全確認がますます困難になることは明らかであり、その意味でも、安全規制としての運転期間制限を撤廃すべきではありません。

意見と理由の例*********

全般的な意見

原発の運転は放射能放出事故の危険を伴う。老朽化した原発の運転はより危険なので一刻も早く止めて欲しい。40年ルールを厳格に守り、40年を超える原発の運転を原則禁止すべきである。

意見1

運転期間の定め(40年ルール)を原子炉等規制法から電気事業法に移すべきではない。原子炉等規制法に残した上で、原子力規制委員会はこれを厳格に守るべきである。

理由1(1)

運転期間の定め(40年ルール)は「利用政策の判断」などではなく、原発の耐用年数が40年であるなどの理由で、「安全規制」の一環として、全会一致で原子炉等規制法に盛り込まれたというのが事実である。これを規制側の原子炉等規制法から撤廃し、利用側の電気事業法に移す根拠はなく、安全をないがしろにするものである。※1

理由1(2)

運転期間の定め(40年ルール)を規制側の原子炉等規制法から利用側の電気事業法に移すことは、「利用と規制の分離」という福島第一原発事故の教訓を踏みにじるものである。また、今回の動きについて2022年7月から原子力規制庁と経済産業省などとの間で秘密裏に協議が進んでいたことが問題になっているが、これは、「分離」どころか「癒着」が進んでいることを示している。全会一致で立法の総意として、安全規制の一環として原子炉等規制法に盛り込まれた運転期間の定め(40年ルール)は、原子力規制委員会こそが厳格に順守しなければならない。※2

意見2

長期停止期間を運転期間から除外すべきではない

理由2

長期停止期間を運転期間から除外する件については、令和2年7月29日の原子力規制委員会の見解に、「長期停止期間中もそうでない期間と同様に劣化が進展する」劣化事象があり、「劣化が進展していないとして除外できる特定の期間を定量的に決めることはできない。」とあるように、規制委側が事業者側の要求を拒否した経緯がある。現在原子力規制委員会は、利用政策側の判断について意見を述べる立場にはないとしているが、運転期間の定め(40年ルール)は利用政策の判断ではなく安全規制として定められたものである。60年を超える運転を可能とすることは、原発を危険にさらすものであり、これを許してはならない。

意見3

原子力規制委員会は、新しい安全規制を検討する前に、判断基準が不十分な状況で技術評価の結果だけしかみないこれまでの審査の欠陥をみとめ、老朽原発の運転を一旦止めた上で、従前の審査の総点検を実施すべきである。

理由3(1)

対象文書や参考資料によると、新たな安全規制では、運転期間延長認可制度と高経年化技術評価の2つの制度を一本化した上で、従来に加えて、事業者側に劣化の点検の方法と結果及び技術評価の方法などを追加して提出を求めるとしている。これまで規制委側は技術評価については評価結果だけをみて審査を通してきたことになる。新たな安全規制では、劣化予測のための評価方法も審査の対象とするというが、中性子照射脆化の問題では、既に審査が終わった原子炉について、予測のための評価方法の信頼性や違法性が問題となり、名古屋地裁で争われている。対象文書には、新たな制度への円滑な移行を図るための措置についての記載もあるが、規制委は新しい安全規制云々の前に、これまでの審査の欠陥を認めた上で、最新の知見を踏まえた判断基準の再検討と従前の審査についての総点検を行わなければならない。少なくともそれまでは40年を超える原子炉の運転を停止すべきである。※3

理由3(2)

審査の判断基準について、新しい安全規制は、「最新の科学的・技術的な知見は、適時に技術基準規則などの規制基準に反映されている」(参考資料P45)ことを前提に「劣化を考慮しても技術基準に適合すること」(対象文書)を要求している。しかし、中性子照射脆化の問題では、技術基準として用いられている民間規格について、従来の規格が使えないことが明らかになり、規格の改訂が要求されながらそれが進まない中で、従来の規格が使われ続けている状況にある。電気ケーブルの劣化については、数値的な判断基準がない。「最新の科学的・技術的な知見は、適時に技術基準規則などの規制基準に反映されている」という前提は崩れている。※4

意見4

「運転開始後30年を超えるが運転しようとしていない発電用原子炉」については廃炉の措置をとらせるべきである。

理由4

対象文章によると「運転開始後30年を超えるが運転しようとしていない発電用原子炉」について「特別な措置の中で劣化管理を行うことを求める」とあるが、危険な老朽原発による運転を少しでも減らすためにも、運転しようとしていない原子炉については廃炉を前提にした対応を求めることを明記すべきである。

詳細*********

※1

・運転期間に関する定め(40年ルール)は、福島第一原発事故の教訓として、原子力規制委員会設置法の制定とセットで提案された。制定当時は民主党政権であったが、議員立法として提案・審議され、2012年に当時野党であった自民党・公明党も含め、全会一致で可決成立した。立法の総意として定められたものである。

・原子炉等規制法改正にむけた国会での議論で、細野豪志環境大臣(当時)は、運転期間を40年とした理由について、「(原子炉が中性子で)40年でもろくなるという結果ははっきり出てきている」と述べたほか、機器の多くが想定使用期間を40年として設計されていることなどをあげている。

・平成二十四年二月七日付政府答弁書(高市早苗議員質問提出)に、「原子炉設置許可の審査において、重要な設備、機器等について中性子照射脆化等の設計上の評価を運転開始後四十年間使用されることを想定して行っていることが多いことを考慮し、原則として四十年としたものである」「安全上のリスクを低減するため発電用原子炉の運転期間を制限することとした」「現行制度においては、法律上発電用原子炉の運転期間を制限していない点が十分でないと考えており、今回の改正案を検討した」との記載がある。

・令和四年十二月二十日付政府答弁書(辻本清美議員質問提出)に、「(原子炉等規制法に規定する)『発電用原子炉を運転することができる期間』については、平成二十四年当時の国会審議において、技術的見地を含め、幅広い観点から議論が行われた上で、立法されたものと認識している」との記載がある。

・原発の耐用年数について同じ政府答弁書に、「原子炉設置許可変更申請書においては、多くの場合、実用発電用原子炉に係る重要な設備、機器等が当該実用発電用原子炉の運転開始後四十年間使用されることを想定して、中性子照射脆化等に係る当該設備、機器等の設計上の評価等が記載されていると承知している」との記載がある。

・2012年6月に開かれた原子力委員会において、内閣府原子力規制組織準備室の担当官が、「運転期間制限」について「安全規制の変更」の項に位置付けて説明していた。

・資源エネルギー庁が2022年9月22日の原子力小委員会の会合に提出した資料に「原子炉等規制法の改正時の国会審議においては、政府及び法案提出者から、以下のような認識が示されている」としたうえで「運転期間に係る規定を含めた安全規制のあり方については、原子力規制委員会の発足後、専門的な観点から検討されるべき」との記載がある。

・圧力容器の中性子照射脆化について、安全確認のために原子炉に入れている監視試験片は40年運転を前提にしており、40年を超える運転では監視試験片が尽きてしまい、監視ができないおそれがある。

※2

・原子力規制委員会設置法の議論において、福島第一原発事故の教訓として当時問題になったのが「利用と規制の分離」であった。福島第一原発事故より前は、規制当局である原子力安全・保安院が、利用側の経済産業省の中にあり、分離していなかったことが問題となった。そのため、原子力規制委員会を政府から独立した組織として設置することになった。このとき、組織だけでなく、法令についても、原子炉の安全規制に関わる法律はすべて原子炉等規制法に一元化することも行われた。そうした中で、運転期間を制限する定め(40年ルール)が原子炉等規制法に「規制」として盛り込まれたというのが事実である。一元化については、2012年6月に開かれた原子力委員会において、内閣府原子力規制組織準備室の担当官が説明している。

・立法の総意として定められた運転期間に関する定め(40年ルール)は、原子力規制委員会こそ厳格に守らなければならないものである。福島第一原発事故の教訓として定められたルールを、事故の教訓として生まれた原子力規制委員会が手放すようなことはあってはならない。

・今回、利用政策側で原発の運転期間延長の動きが出た際に、それを止めなければならない立場の原子力規制委員会が、率先して規制としての運転期間制限撤廃に動いたことも問題である。利用と規制の分離という福島第一原発事故の教訓を踏みにじるものである。

・原子力資料情報室が公表した、2022年8月に原子力規制庁が作成したとされる内部資料には、「来年の常会に提出予定のエネ関連の『束ね法』(経産主請議)により、現在、炉規制法に規定されている発電炉の運転期間制限を、電気事業法に移管」といった記載がある。原子力規制庁と経済産業省などとの間で秘密裏に協議が進んでいたことを関係者も認めている。「利用と規制の分離」どころか「癒着」が進んでいる何よりの証拠である。「頭の体操」などと言って済まされる問題ではない。

※3

・参考資料に「(従来の)高経年化技術評価では…経年劣化に関する技術的な評価については、その評価の結果のみが添付書類として示されている」(P43)、「(新しい安全規制で策定を義務付ける)長期施設管理計画には、現行の長期施設管理方針の内容に加えて、発電用原子炉施設の劣化状態を把握するための点検等の方法及び結果、経年劣化に関する技術的な評価の方法及び結果、10年を超えない期間ごとの劣化管理の目標や方法等を記載することとしてはどうか。これにより、当該期間に生ずる劣化を考慮しても発電用原子炉施設が技術基準への適合を維持できる見込みがあるかどうか、またそのためにどのような劣化管理の取組が必要となるか等を確認することができると考えられる」(P45)とあり、従来の評価では不十分であることを認めている。

・中性子照射脆化の問題で安全確認のために行う監視試験片による破壊試験のうち、破壊靭性試験によける加圧熱衝撃評価については、クラッドの有無や沸騰の考慮などの条件設定が、熱伝達率を介して評価の合否に影響する。運転期間延長認可を受けた高浜1・2号炉及び美浜3号炉について、規制委は熱伝達率の数値を確認していないことが名古屋訴訟で明らかになっている。

※4

・中性子照射脆化の劣化予測に技術基準として用いられている民間規格JEAC4201-2007及びJEAC4206-2007については種々の問題から改訂が要求されており、検討が行われているが、審査では従来の規格に従った評価が行われている。