40syomei

原発の運転期間の定め(40年ルール)を原子炉等規制法から撤廃し、原発の60年超運転を容認する方針について、原子力規制委員会の石渡委員は、原子力規制委員会の存在意義をかけて、勇気ある反対意見表明を行い、先週水曜日の原子力規制委員会定例会合での決定は見送られました。政府はこれを無視する形で、原発推進のGX基本方針の閣議決定を行いました。続けては運転期間の定めについても閣議決定を行う予定でいます。原子力規制委員会は、水曜日の定例会合をまたず、月曜日に臨時の会合をもち、石渡委員の意見を封じようとしています。スケジュール優先の強引なやり方も許せません。

★臨時会合の傍聴と抗議アピール行動への参加をよびかけます★

◆第72回 原子力規制委員会臨時会議
https://www.nra.go.jp/disclosure/committee/kisei/010000797.html
日時 2023年2月13日(月) 18:30~19:30
議題 高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の検討(第9回) 決定 了承
〇直接の傍聴は2月13日(月)12:00までに電話か電子メールで登録が必要です。
https://www.nra.go.jp/disclosure/committee/kisei/010000797.html

◆抗議アピール行動(原子力規制委員会のある六本木ファーストビル前)※
開始前 17:45~18:15
終了後 終了後15分程度

★「規制」が「利用」に飲み込まれる★

石渡委員は反対の理由として、1.科学的技術的な何らかの新知見もなく運転期間を原子炉等規制法から落とすことは安全側への改変とは言えない、2.炉規法を我々が自ら進んで改正する必要はない、3.審査に時間をかければかけるほどその分運転期間が延びるような案ではより高経年化した炉を将来動かすことになり二律背反である、との3つを挙げています。本質をついた意見だと思います。
山中委員長は、2年前に原子力規制委員会が出した見解に「発電用原子炉施設の利用をどのくらいの期間認めることとするかは、原子力の利用の在り方に関する政策判断にほかならず、原子力規制委員会が意見を述べるべき事柄ではない。」との文言があることだけをもって、まるで40年ルールがはじめから、安全規制ではなく、利用政策判断として定められたかのようにふるまい、規制側の原子炉等規制法から利用側の電気事業法に移すことを正当化しました。

しかし、事実は違います。40年ルールは安全規制として原子炉等規制法に盛り込まれたというのが事実です。そのことを如実に示すのが、この問題でエネ庁と規制庁が密室での会合を繰返していたことが問題となり、規制庁が経緯を説明した資料の中にあった文書です。

「運転期間の見直しに係る経緯に関し、本日公表する資料の一覧」
https://www.nra.go.jp/data/000419401.pdf
〈A〉が「原子力規制委員会設置法<解説>(原子炉等規制法、電気事業法)平成24年7月 内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室」とある文書です。

この文書は、運転期間等について、改正された原子炉等規制法の条文を引用したうえで、【改正の趣旨】として、「一般的に、設備、機器等は、使用年数の経過に従って、経年劣化等によりその安全上のリスクが増大することから、こうしたリスクを低減するという趣旨から、本条は、運転することができる期間を制限するものである」と記されています。安全上のリスクを低減するのが趣旨だと明確に書いています。

規制庁はエネ庁の求めに応じて上記文書を昨年7月29日にエネ庁に渡していました。しかし、エネ庁は8月19日には、運転期間を原子炉等規制法から落とした改正イメージを提示しています。改正イメージと上記文書との矛盾は明らかですが、その後、規制庁・規制委側はエネ庁の言い分をそのまま受け入れてことを進めてしまいます。

10月5日の原子力規制委員会定例会合において、山中委員長はエネ庁を呼んで、運転延長が必要だと言わせた上で、2年前の見解の「発電用原子炉施設の利用をどのくらいの期間認めることとするかは、原子力の利用の在り方に関する政策判断にほかならず、原子力規制委員会が意見を述べるべき事柄ではない。」との文言について、委員に対し、今でも変わりないかとの合意を特に説明もなく迫り、頷かせます。そしてその後の記者会見の場で、運転期間の定めを原子炉等規制法から「抜く」話をはじめたのです。だまし討ちのようなやり方でした。

石渡さんは、上記のからくりを百も承知でこぞって利用側の経産省エネ庁のいうがままに動くいまの規制委・規制庁が許せなかったのだと思います。規制委の存在意義が失われる危機感、「規制」が「利用」に飲み込まれるのに自分まで加担することになるとの危機感から、反対意見表明に至ったのだと思います。

原子炉等規制法から40年ルールを撤廃してはなりません。原発の60年超運転を許すことはできません。40年ルールを厳格に守り、守らせるのが原子力規制委員会の責務です。法案審議はこれからです。引き続き反対の声を上げていきましょう。

阪上 武(原子力規制を監視する市民の会)
※抗議アピールは3団体で行います