能登半島地震から1年

「能登半島地震から1年~原発複合災害と避難問題」と題した院内集会&政府交渉が1月20日参議院議員会館にて行われました。会場に30名ほど、オンラインで110名ほどの参加がありました。珠洲から北野進さん、石巻から日野正美さん、小浜(福井)から石地優さん、刈羽から武本和幸さんにご参加いただきました。立憲の近藤昭一議員、設定をお願いした社民の福島みずほ議員にもご参加いただきました。政府交渉には、内閣府の原子力防災担当と原子力規制庁の放射線防護グループからそれぞれ1名が対応しました。

事前質問書
http://kiseikanshi.main.jp/wp-content/uploads/2024/12/noto-hinan-20250120.pdf

当日のアーカイブ映像
https://youtu.be/FPGwl8MHUVw

当日の資料は以下をご覧ください。
https://foejapan.org/issue/20250107/21813/

院内集会では北野さんから、能登半島地震における孤立集落の状況、特に奥能登で被害が甚大で、孤立集落の把握すらなかなかできなかったこと、ヘリや船舶も使えなかったこと、石川県が強行した避難訓練は能登半島地震の現実を踏まえず、原子力防災グッズの売込みの場と化していたことなどが報告されました。

◆内閣府原子力防災担当は能登半島地震全体の被害実態の調査に関与せず
◆原発を動かすために地震被害を過小評価しているとしか思えない

政府交渉ではまず内閣府の原子力防災担当による能登半島地震の調査報告について、1.調査対象が志賀原発30キロ圏に限定されていること、2.調査項目が、・多数の道路寸断・孤立地区の発生・放射線防護施設の損傷、の3点に限られていることについて問い質しました。内閣府原子力防災担当の回答は、調査報告は志賀原発の地域協議会作業部会の検討のためのものであり、3点の事実を報道で確認したので、3点につき30キロ圏について調査した、各地の原発の緊急時対応については孤立集落対策など各地の実情に応じて行う、というものでした。

孤立集落は30キロ圏外の奥能登で顕著であり、能登半島地震による被害の全体を把握しないと、志賀原発を含め、全国各地の原発の避難計画に反映しようがありません。これについて聞くと、能登半島地震の被害全体の調査は、別部署の内閣府防災担当で行っていると。ではその調査に内閣府原子力防災担当は関与しているのかと聞くと、関与していないと。それでは能登半島地震の実態を反映することはできないではないかと聞くと、ご意見として伺っておきますと。北野さんは、原発を動かすために地震被害を過小評価しているとしか思えないと指摘されました。

内閣府原子力防災担当は、能登半島地震では原発事故は起きていないことを強調しました。だから複合災害を考慮した実態調査は不要だというのでしょうか。そうした姿勢が、福島第一原発事故による災害を拡大したのではないでしょうか。全体的な実態調査は能登半島地震の教訓を反映させるための第一歩となるはずのものです。参加者は改めて調査実施を要求しました。

◆内閣府「PAZ(5キロ圏)が孤立で避難できなければ屋内退避」
◆「放射線防護施設」に収容しきれない。すべての集落にない。損傷して使えない。
◆「一般施設に屋内退避」では「被ばくによる重篤な確定的影響」は回避できない
◆計画の段階で被ばく回避を放棄するのは指針に反する
◆避難計画の破綻は明確。原発は一旦稼働をとめるべき。

原発から5キロ圏のPAZにおいて孤立集落が生じると非常に深刻な状況となります。屋内退避や安定ヨウ素剤の摂取などの防護措置を取っても、100ミリシーベルトを超える被ばくにより「重篤な確定的影響」が避けられないおそれがあることから、放射能が放出される前に避難することになっています。どうしても避難ができない方については、放射線防護施設に屋内退避することになっています。病院や介護施設については、施設の中に放射線対策防護施設を設けています。

PAZで孤立集落が生じた場合、短時間での道路開通は見込めず、ヘリや海路も困難ですので、放射線防護施設に逃げ込むしかありません。しかし孤立した全員を収容することはできませんし、放射線防護施設がない集落も多くあります。また、能登半島地震ではPAZの放射線防護施設はすべて、地震による損傷等により使えなくなりました。

内閣府はPAZで孤立集落が生じた場合の対応について、道路の啓開に努める、時間がかかる場合は一旦、放射線防護施設を含む施設に屋内退避し、状況に応じて空路や海路の避難も実施する、と回答しました。武本さんが、柏崎刈羽のPAZは2万人いるが、放射線防護施設は2千人しか収容できない、足りないではないか、と指摘しました。内閣府は、そうした場合は一般施設に屋内退避することになると回答しました。

規制庁に、それでよいのかと問うと、原則は避難だが避難ができない場合は屋内退避となっていると。しかし、「それでは『被ばくによる重篤な確定的影響』を回避することはできない」「指針にある屋内退避は放射線防護施設への屋内退避を指しているのではないか」「計画の段階で被ばく回避を放棄してはいいのか」などと指摘すると、被ばくの低減と被ばく以外の健康影響を抑えることは同時にやらなければならないこと、被ばくによる重篤な確定的影響は回避しなければならないことは認めました。

参加者は、避難計画の破綻は明らかであり、現在の緊急時対応の承認は取り消し、いったん原発をとめたうえで検討すべきだとし、原発の稼働・再稼働をとめるよう要請して終わりました。

阪上 武(原子力規制を監視する市民の会)