巨大噴火のリスクは無視してよい!と驚きの宣言で裁判対策
~原子力規制委会合で火山ガイドの考え方について検討~

image1

みなさまへ(拡散希望)

本日3月7日の原子力規制委員会の定例会合で火山ガイドの考え方について議題になっていましたので傍聴してきました。動画と資料は規制委HPから見ることができます。

http://www.nsr.go.jp/data/000222268.pdf
https://www.youtube.com/watch?v=MS2twdZPwGU

資料によると、広範囲に火砕流が及ぶような巨大噴火(噴火規模が数十キロ程度を超えるもの)について、「低頻度な事象」であるから「巨大噴火によるリスクは、社会通念上容認される水準であると判断できる」としたうえで、「運用期間中に巨大噴火が発生するという科学的に合理性のある具体的な根拠があるとはいえない場合は、少なくとも運用期間中は、「巨大噴火の可能性が十分に小さい」と判断できる」としています。

ilovepdf_com ilovepdf_com-1

これは従来の審査の方針をかえ、火山ガイドの判断基準を大きくねじ曲げるものです。

火山ガイドは「可能性が十分に小さいこと」の立証を電力会社に課しています。グレーは黒が原則です。それを「根拠があるとはいえない」でよい、すなわちグレーは白でよいとしているのです。事業者が積極的に「根拠がある」ことを立証するはずはありません。この点は、委員会会合の中で規制委の伴氏も指摘していました。事業者にしてみれば、適当に調べたことにして「根拠があるとはいえない」とだけ言えばよいのです。こんなやり方では審査にならないことは当たり前です。

その前提は、巨大噴火はあまりに被害が甚大で低頻度なのでリスクは無視するのが社会通念だというのもあまりに乱暴な議論です。更田委員長は、会合の中で、地震と違い、火山については観測データが乏しくてよくわからないところがある、だからリスクをすべて負うことはできないとも述べていました。これは逆ではないでしょうか。わからないからリスクを無視してよいというのはまったく理解に苦しみます。

この社会通念論は、川内原発の運転差止仮処分で福岡高裁宮崎支部が下した決定で、「可能性が十分に小さいとは言えない」ことを認めながらも差し止めを認めなかった理屈です。伊方原発の運転差止仮処分で広島高裁は、火山ガイドに素直に従えば立地不適だとして差し止めを認めています。

まもなく、大間原発をめぐり函館地裁の決定が19日に出ます。玄海原発についての決定も続きます。規制委は、今後も広島高裁のような判決が出るおそれがあることから、自ら決めた火山ガイドをかなぐり捨てて、福岡高裁宮崎支部決定にすり寄り、原発が停止する事態を避けようとしているのです。

裁判で問題になった噴火は、噴火指数7以上の破局的噴火でしたが、今回規制庁が提示した文書では、噴火指数6以上を巨大噴火として、リスクを無視してよい対象の噴火をさらに広げています。この点も大いに問題があると思います。

阪上 武(原子力規制を監視する市民の会)