関電原発の火山灰問題で、毎日新聞に力のこもったスクープ記事が連日掲載されています。
https://mainichi.jp/articles/20200104/ddm/001/010/077000c
https://mainichi.jp/articles/20200104/k00/00m/040/158000c
関電原発の火山灰問題で、1月4日と5日に毎日新聞に力のこもったスクープ記事が掲載されました。記事によると、関電原発の火山灰対策について、2018年12月6日に重要な方針を決める会合が密室で行われており、この会合で提示された2つの案のうち、1案が排除されていました。その後行われた公開の会合で、はじめから残った案だけが提示され、了承された経緯がありました。さらにこの密室会合について議事録もつくらず、検討につかった資料はシュレッダーにかけるなどして廃棄し、毎日新聞の情報開示請求に対しても廃棄して存在しないと回答していました。文書名を特定して再度請求したら、メールの添付ファイルにかろうじて残っていたものからようやく出てきたとのことですが、隠ぺいを図ろうとしたとしかみえません。規制庁版「桜を見る会」の様相を呈しています。
◆密室会合で関電原発の停止を避ける手順を決めていた
密室会合が行われたのは2018年12月6日ですが、当時、関電原発は、火山灰の影響評価の元になる設計層厚の過小評価が問題になっていました。
関電は設計層厚を10センチとし適合性審査の許可を得ていましたが、大山火山灰の新知見(というより知見の見落とし)により、これが倍の20センチ以上となり、基準不適合であることが明らかになったのです。再審査が必至となりました。
密室会合の資料によると、再審査の手順は2つあります。1案は、指導文書により関電に再申請を促し、再審査を行って設計層厚を変えるというもの。2案は、先に報告徴収命令により関電に報告書を書かせ、それを審査したところで基準に適合しない可能性を明らかにする、そのうえでようやく関電に再申請をさせて再審査に入るというものです。
◆原発停止避けるために基準適合性違反の判断を先送り
普通に考えれば1案で済むはずです。基準不適合を認めても猶予期間を設けるのが原則になっていますので、原発を止める必要もなかったはずです。しかし、このときはそうはいかず、規制庁は頭をひねりにひねって2案の流れを編み出したのだと思います。
なぜ1案ではダメなのか。資料の2案の<特徴>とあるところに「・設置変更許可が行われるまでの間は、工認、保安規定は既になされた許可に基づき審査を行う。」とあるのがミソです。当時は、関電原発問題とは別に、規則改定による火山灰濃度変更にともない、すべての原発に課せられた保安規定の変更について、猶予期間の最中でした。関電についても、既許可の層厚10センチを前提とした保安規定の認可を早急に下さなければ、猶予期間の期限の12月31日に間に合わなくなる状況でした。
1案の場合では、1案の<特徴>に「・現在の状況が基準に適合していないというポジション」とあるように、既許可の状況に基づく保安規定の認可が出せません。規制委は、猶予期間は認めても猶予期間の延長は認めないという姿勢でいますから、年を越せば、猶予期間の期限切れで、高浜原発と大飯原発の稼働中の原子炉はすべて止めなくてはなりません。これを避けて関電に貸しをつくったのではないでしょうか。実際、報告徴収命令(12月12日)の5日後の12月17日に保安規定認可を下しています。
◆原発は危険な状態で動いている…直ちに停止を!
高浜原発や大飯原発は、火山灰対策が不十分な状態で動いています。直ちに停止すべきです。この12月17日の保安規定認可については、取消しをもとめる行政不服審査法に基づく審査請求を行っています。2019年末に答弁書(中身は審査書そのまま)が来て、3月には口頭意見陳述を行うことになっています。今回出てきた資料の中身についても問い質していきたいと思います。
阪上 武