原子力災害対策指針改悪についての政府交渉
規制庁側は、原子力防災担当の若い係長、やや年配の課長補佐と専門官の3名でした。市民側は30名ほど。岐阜から兼松さん、井戸川さん、崎山さん、福島みずほ議員も参加されました。
若い係長はモニタリングの担当でしたが、質問に答え切れず、他の2名が主に対応していましたが、他人事のように公式見解を繰り返すばかりでした。
主に議論になったのは、SPEEDIについて、安定ヨウ素剤の配布について、1日待って避難の3点です。
<SPEEDIについて>
SPEEDIの扱いについては、こちらから、福島の経験を踏まえて、より活用する方向で検討すべきではないかと質すと、とにかくSPEEDIは不確実でだめだと、ソースタームがあったとしても、気象の拡散予測が信用ならないと全否定してきました。
それは福島事故とは関係ないでしょうと問うと、事故前から見直しの議論はあったと。福島事故時のSPEEDI予測については、あれは逆解析だから合うのは当たり前だと。では事故発生直後に逆解析を行いそれを使えばよいではないか、今回の指針改定で削除となったところにも逆解析を行うと書いてあったと指摘しましたが、とにかくSPEEDIは不確実だからダメだと繰り返すばかりでした。
兼松さんからは、岐阜県が設置した外部専門家会議で、委員から、SPEEDIを使わないことに対する批判が出たことの指摘がありました。新潟県も予測に基づく避難を求め文言を削除しないようにとのパブコメを出しています。SPEEDIの活用について再検討を求めました。
<安定ヨウ素剤について>
安定ヨウ素剤について、プルーム対策として、30キロ圏外でも配布すべきではないかと質しました。規制庁は、プルーム対策は屋内退避が基本だ、ヨウ素剤はタイミングが難しくプルーム通過の後では意味がない、タイミングや範囲の予測が困難が困難だと回答。
それでは、UPZ内はどうなっているのかと聞くと、備蓄して配布することになっていると。プルームに間に合うのかと聞くと、間に合うかもしれないし、間に合わないかもしれないと。UPZ外も同じではないか。なぜ配布しないのかと聞くと、プルームは30キロしか届かないと言い始めました。
その根拠となっているシミュレーションがあるのですが、事故の規模を福島事故の100分の1程度のセシウム100テラベクレルの条件なのです。これは、重大事故対策の安全目標であり、ここまでの事故しか起こりませんよというものではない、避難の想定で使うのはおかしい、少なくとも福島事故規模を想定すべきだと主張しました。規制庁は、福島事故を超える事故でも対応できるようにすると言いながら、安全目標を想定に使うので問題はないと矛盾した回答を繰り返していました。
ヨウ素剤配布については、UPZ内について、プルーム通過に間に合うように配布しろと指針に書くべきではないか、そのために事前配布が必要ならそうすべきだ、UPZ外についても同じだ、福島では甲状腺がんが多発しており事故との関係について検証が必要な状況だ、福島事故の際に、50km圏の三春町では配布された、今回の改訂は後退ではないかと主張し、UPZ外のヨウ素剤配布を削ったことについて撤回を求めました。崎山さんからは、ヨウ素剤は早めに飲めるようにしておけばよいとのコメントがありました。
規制庁は、屋内退避でよいのだと繰り返しました。三春町の件は自治体が独自でやったもので、今後も規制庁が止めることはないとの回答でしたが、そんなことはどこにも書いていません。
<OIL2 一日待っての避難>
今回、一時移転の判断基準であるOIL2について、基準値の1時間あたり20マイクロシーベルトという通常の400倍程度の放射線量を観測してもすぐには避難できず、一日待ってまだ20マイクロシーベルトを超えたらようやく避難開始となるとの文言が加わりました。即時避難の判断基準であるOIL1は毎時500マイクロシーベルトであるので、事故により、毎時490マイクロシーベルトが観測されてもすぐには避難できず、そのまま線量が下がらなくて恐ろしく高い線量が続いたとしても一日待たないと避難できないことになります。
一日待ての指針が高いレベルの被ばくを住民に強いることになるのではないかと質しました。規制庁は、いや実際にはきめ細かく測って対応するだろうからそんなことにはならないはずだと涼しい顔。だったらそのように書き直せと、一日待てについても撤回するように求めました。