原子力規制委員会田中俊一委員長は、4月8日の定例会合の予定議題終了後に、美浜原発3号機の破砕帯評価について、話をはじめ、専門家による評価が継続中であるにもかかわらず、その検討内容をねじ曲げた上で、具体的な審査に入るとしました。
これは有識者による検討をないがしろにするばかりでなく、「活動が否定できなければ活断層」すなわち「疑いあらばクロ」と定めた新規制基準にも反するものです。

破砕帯専門家会合の検討内容をねじ曲げた

4月8日の原子力規制委員会定例会合では、田中俊一委員長と断層評価を担当している規制委員の石渡氏とのあいだで以下のやりとりがありました。

◆田中委員長◆「美浜発電所敷地内破砕帯有識者会合をYOU TUBEで見ましたが、みなさんの見方が一定の方向でまとまったように感じましたけれど、石渡委員に説明をお願いしたいと思います」

◆石渡委員◆「はい。一昨日に第4回の評価会合を実施しました。4名の有識者がそれぞれの意見を述べられました。その結果、個々の破砕帯の活動性につきましては、後期更新世以降に活動したというような明確な情報はないという点については、4人の方々で大きな隔たりはございませんでした。一方で調査データの不足が若干あるとの指摘がございまして、今後対応していく必要があると考えております。」「いずれにしましても、有識者の見解に一定の方向性が出たということで、次回の評価会合では評価書案を提示した上で議論を目指していくというのが基本的な方針でございます」

◆田中委員長◆「美浜3号炉についてはすでに適合性審査が開始されているところでございます。いま石渡委員からご説明がありましたように、敷地内破砕帯評価につきましては、Sクラスの施設の下に当面活動するような破砕帯はないという理解でよろしいですか

◆石渡委員◆「そうですね、そういう後期更新世以降の活動を示唆するような明確な情報はなかったという点については一致したということは事実でございます」

まるで、有識者会合で、美浜原発の重要施設直下に活断層はないとの意見で一致したかのようです。しかし、ここで問題になっている4月6日の美浜発電所破砕帯評価会合第4回会合では、有識者のプレゼンを受けて、石渡委員は以下のようにまとめています。

◆石渡委員◆「以上で4人の先生方のプレゼンテーションを一通り終わったのですが、だいたい先生方のご意見はあまり隔たっていないように感じました。つまり後期更新世以後にこれらの破砕帯が動いたという明確な積極的な証拠というものはないと、では後期更新世以降はそれらが絶対に動いていないか、それを否定するような根拠というものも残念ながらない、という点ではみなさん一致しているのではないかと思います。

石渡氏は、原発直下の破砕帯が活断層である証拠もないが、それを否定する証拠もないという点で意見が一致したと述べていたのです。規制委員会定例会合では、後半の「否定する証拠もない」との一致点を意図的に外しています。

これは大きな問題です。というのは、新規制基準の断層評価に関する審査ガイドでは、活断層の定義を「将来活動する可能性がある断層等は、後期更新世以降(約12~13万年前以降)の活動が否定できないもの」としています。すなわち、原発直下の破砕帯の判定は、活断層である証拠の有無ではなく、それを否定する証拠の有無によるのです!

その上、美浜原発については、破砕帯の上にあった地層が工事ではぎ取られてしまっており、後期更新世以後の地盤がないのです。後期更新世以降に破砕帯が動いた証拠がないのは当たり前のことであり、それでは基準を満たさないので、関電は、後期更新世以降の活動が否定できないことを示すのに必死になっているのです。それでもデータが不足しており「否定する根拠はない」というのが、委員の一致した見解なのです。

これをねじ曲げて、肝心な部分をカットすることにより、まるで破砕帯の活動性はないことで一致したかのように話を持って行っているのです。茶番です!

有識者会合の検討をないがしろにし、検討結果をねじまげ、自ら定めた基準を踏みにじるようなやり方は絶対にゆるせません!

活断層と認定しながら審査を受理??敦賀原発は廃炉に!

3月25日の原子力規制委員会定例会合では、敦賀原発と東通原発の破砕帯評価結果についてやりとりがありました。敦賀原発については、2号機直下のD-1破砕帯について、有識者による評価会合で活断層であるとの判定がくだされています。
しかも、日本原電の再調査結果を踏まえた追加の評価でも、改めて活断層だとの認定が昨年12月に出ているのです。ところが、定例会合の場で、田中俊一氏は、「議論が錯綜している」と切り出し、破砕帯の活動性の判断は、適合性審査の場で行うと言うのです。

すでに規制委員会が行った調査で活断層であるとの判断が二度にわたり出ているのになぜ審査を行うのか?全く理解できません。税金の無駄遣いの何ものでもありません。直ちに廃炉を決めるべきです。
東北電力東通原発については、破砕帯評価結果には、活断層である、活断層でない、データ不足で判定できないの3つの結論が併記されています。これは、学問上の活断層の認定ではなく、原発の安全確保の観点からの認定です。「否定できなければ活断層」との基準にしたがえば、当然、活断層とすべきです。

破砕帯評価について、評価中の原発について審査を中止するよう、また、活断層と認定された敦賀原発について、また、否定することができない東通原発について、直ちに廃炉の手続きに入るよう、規制委・規制庁に電話やFAX・メールなどで要求しましょう。