核燃料の再処理等に必要な資金確保について政府が、1月5日期限で、パブリック・コメントを募集しています。新制度では、再処理や廃棄物処理について、国の関与と強制力を強め、再処理等の実施を確実に行うとしています。しかし、再処理を前提とした現状の基本方針は、危険性や技術的困難、コスト面からも現実的には破綻しています。抜本的に見直し、再処理を実施しない政策への転換を図るべきです。ぜひパブリック・コメントに意見を出して、再処理の延命にノーの声を届けましょう。

<パブリック・コメントの資料と応募はこちらから>
「新たな環境下における使用済燃料の再処理等について(案)」

<参考サイト>
「使用済み核燃料再処理の延命にノーの声を」(国際環境NGO FoE Japan)
再処理実施主体としての認可法人設立案─「再処理は永遠に不滅です」(核情報)

政府が「中間報告」で示した方針

電力全面自由化により「地域独占・総括原価方式の料金規制による投資回収保証が失われた競争環境下においては、原子力事業者が破綻した場合など、使用済燃料の再処理等に必要な資金が安定的に確保できなくなる可能性がある。」ことから、「再処理等に必要な資金を確実に確保するため、(これまでの)積立金制度を改め、原子力事業者に対して」「再処理等の実施に必要な費用を再処理等の実施に責任を負う主体(新法人)に拠出することを義務付け、拠出された資金を新法人に帰属させる制度(拠出金制度)に改める。」というものです。

<再処理から撤退させない制度>

「新法人は、独自の判断によって解散ができない法人であることに加え、例えば、拠出金を強制的に徴収する権限を付与するなど、資金を確実に確保するために必要な措置を講じることが必要である。」としたうえで、「新法人は、民間主導で設立される一方で、 国が必要な関与を行うことができる「認可法人」として設立することが適当である。」としています。国の関与と強制力を強め、原子力事業者を再処理から撤退させない制度となっています。

<拠出金の対象を拡大>

「拠出金制度においては、現行の積立金制度の対象となっていない使用済燃料も含め(現行の制度では六ヶ所再処理工場の再処理分だけが対象となっている)、全ての使用済燃料を対象とする。また、再処理工場での工程と不可分な関連事業(MOX 加工事業、廃棄 物処分等)の実施に要する費用についても、制度の趣旨に鑑みて拠出金制度の対象とする。これにより、万一、原子力事業者が破綻した場合に も関連事業を含めた事業全体について確実に資金を確保する。」とあります。対象が大幅に拡大されます。

<再処理等の実施の第一義的な責任は「新法人」が負う>

原子力事業者は、「使用済燃料を発生させた主体として、発生者負担の原則に沿って」「引き続き責任を果たすことを大前提」としたうえで、新法人は、「拠出金に係る使用済燃料の再処理等の適切かつ効率的な実施に一義的な責任を負う。加えて、関係する事業全体を勘案した実施計画の策定等を通して、総合的なマネージメントを行う」とあります。

<将来的に原発をもたない電力会社にも負担が及ぶ可能性>

新制度は、再処理資金を原子力事業者が拠出することとしていますが、留意点に「予見し難い事態によって追加的な費用が必要になるような場合には、その原因や費用の性質等に応じて、競争中立的な方法で当該費用を確保する方策を含め、必要に応じて適切な措置を検討していく必要があると考えられる。」とあり、将来的に、託送料等を通じて、原発を持たない電力事業者から間接的に資金を拠出させる可能性を排除していません。

パブリック・コメントの例

意見/再処理を前提とした現状の基本方針を抜本的に見直し、再処理を実施しない政策への転換を図るべきである。

理由/
1.電力全面自由化等により、再処理費用の回収が立ち行かなくなる恐れがあるということだが、これまで、国も原子力事業者も、再処理費用や廃炉、廃棄物処理のための費用を加味しても、原子力の発電コストは他の発電方法よりも安価であると強調してきた。そうであれば、電力全面自由化によっても、再処理事業のための回収になんら影響はないはずである。
そうではなくて、原子力事業者の破たんが問題になるほど、コストがかかり、負担が大きいのであれば、高コストの要因である再処理事業を実施しない政策への転換を図り、原発から再生可能エネルギーへの誘導を含め、抜本的な見直しを行うべきである。

2.「もんじゅ」は、原子力規制委員会により事業者が失格とされ、廃炉の可能性も出てきている。問題は単に事業者の資質に限らず、技術的な困難や構造的な欠陥も指摘されている。「もんじゅ」は既に、「高速増殖炉」であることをあきらめ、当初とはまったく目的が異なる研究のための実験炉の位置づけでしかない。
核燃料サイクル政策の要となる高速増殖炉の見通しがない状況で、再処理を前提とした基本方針を維持する意味はない。第二再処理工場の目途が全くないことからいっても、全量再処理の方針はすでに破たんしているといってもよい。
プルサーマルについては、コストの面でも、安全上の面でも、使用済み燃料の取扱いや処分についても問題があり、高速増殖炉の代わりとなるものではない。このような状況で再処理を継続すれば、プルトニウムさらにため込むことになり、国際的な理解を得ることがますます困難になる。

3.六ヶ所再処理工場は、建設開始からすでに20年近く経過しており、すでに老朽施設となっている。しかも試運転により、既に施設は高いレベルの放射能で汚染されており、メンテナンスもままならない。また試運転の時は、高レベルガラス固化体の製造に失敗したが、これの原因すら解明できていない状況にある。施設の直下では六ヶ所断層が見つかり、また施設近傍では100キロを超える長大な海底活断層が見つかっている。耐震安全性に懸念がある。
このような状況で、六ヶ所再処理工場の本格操業を実施するのは危険である。

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意見/新制度は、原子力事業者に再処理を強要するものであり、政策転換を困難にし、硬直化をもたらすことから反対である。

理由/新制度では、再処理や廃棄物処理費用の回収を、法律によってでしか解散できず強制徴収権の付与が可能な認可法人が行うことになる。これは、原子力事業者に再処理から撤退させない制度であり、全量再処理を前提とした非現実的な政策を硬直化させ、政策転換をやりにくくするものである。

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意見/原発を持たない電力事業者から間接的に拠出させる可能性を排除すべきである。

理由/新制度は、再処理費用を原子力事業者が拠出することとしているが、留意点に「予見し難い事態によって追加的な費用が必要になるような場合には、その原因や費用の性質等に応じて、競争中立的な方法で当該費用を確保する方策を含め、必要に応じて適切な措置を検討していく必要があると考えられる。」とあり、将来的に、託送料等を通じて、原発を持たない電力事業者から間接的に拠出させる可能性を排除していない。再生可能エネルギーを促進させるために、そのような可能性を排除すべきである。