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みなさまへ

3月6日午後、原子力規制委員会の会議室において、関電の火山灰対策(火山灰層厚10cmを前提)に関する行政不服審査法に基づく審査請求の口頭意見陳述会が開催されました。私と大阪からかけつけた島田さんの二人で陳述してきました。

★「活火山ではないので原発を止めなくてもよい」とする判断の根拠なし

会場はロの字のテーブルで、私たちの向かいに処分庁として規制庁実用炉審査部門の職員2名、横に審査庁として同じく実用炉審査部門の職員2名が座っていました。1時間の予定でしたが10分くらい延長したと思います。意見陳述を5分くらいで終わらせ、ほとんどを処分庁との質疑に充てました。今後、審査庁が決定文案を書いて、規制委委員を含めた非公開会合を経て決済するとのことでした。

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原発の火山灰対策について、2017年12月14日に規則及び火山ガイドが改定され、電力会社は火山灰濃度を設定した上で、非常用ディーぜル発電機のフィルタの設置や清掃・交換手順を定めた保安規定の変更申請を行い、規制委は年末の猶予期限直前の2018年12月17日に認可を下しました。

同じ時期、関電の原発については、京都市越畑地区の25cmの火山灰層が新知見と認められ、2018年12月12日に規制委は、噴火規模、最大層厚(火山灰の厚み)の見直しについて、関電に対し報告徴収命令を下しました。最大層厚は原発の火山灰対策の基礎となる数値で、関電の原発は、従前の10cmが2倍以上となります。火山灰濃度も大幅に上がり、フィルタの性能強化が求められます。

規制委は、報告聴取命令のわずか5日後に、従前の最大層厚10cmを前提とした関電の保安規定変更に認可を下しました。私たちはこの処分が安全確保を求めた基準規則6条に違反するとし、稼働中の大飯、高浜原発について、認可の取消しと原発停止の仮執行を求めて、2019年3月に審査請求を行いました。多くの皆さんに審査請求人に加わっていただきました。

その後、規制委は最大層厚10cmが基準不適合であることを認め、2019年6月19日に、関電に対し設置変更許可の変更命令を下しました。しかし規制委は「大山火山は活火山ではなく噴火が差し迫った状況にあるとはいえず」という理由で原発を止めようとしません。火山灰濃度やフィルタ交換手順の変更を含めて火山灰対応の期限すら決めていません。

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そこで私たちは、口頭意見陳述会において、原発を止めなくてもよいとする判断の根拠、最大層厚の変更をなぜ考慮しなかったのか等について問いただしました。

◆「活火山ではないので原発を止めなくてもよい」とする判断の根拠なし

規制委が、最大層厚の見直しに際し、原発の停止を求めない理由に、対象の大山火山が気象庁が定める活火山ではないことを挙げている点について、当初処分庁は、審査請求の対象である保安規定変更認可とは関係ないとして回答を渋っていましたが、何度かやり取りをして、ガイドや基準などそのように定めた文書はないこと、規制委員会が個別に判断したもので、専門家の意見も聞いておらず、特別に会合を開いての検討も行っていないことを認めました。規制委の独善的な判断だけということになります。これを引き出せたのは成果だと思います。今後の活動に活かしていきましょう。

◆あくまで運転継続を前提に使えないとわかった想定で認可

規制委はなぜ、前提条件(火山灰層厚10cm)が崩れたことが明らかになった処分を行ったのか。処分庁は、2018年12月12日の報告徴収命令の際に、本件を含む審査について、見直し前の条件で審査するとの方針を決めており、そのほうが審査しないより火山灰対策の強化につながると判断したからだと回答しました。

しかしそれは、あくまで原発を止めないことが前提です。このとき、本件保安規定変更認可については、年末の猶予期限が迫っていました。認可せずに原発を止め、抜本的な対策をとらせることもできたはずです。安全確保を優先するのであれば、それが当たり前だと思いますが、その点については、検討すらしなかったとの回答でした。

しかしこの件については、毎日新聞が、規制委がすぐに基準不適合を認める案を12月6日の密室会合で握りつぶしていたことをスクープしています。規制委は原発を止めないようにするために、基準不適合の判断を先送りにし、期限が近い本件の認可を優先したのではないでしょうか。処分庁は答えられないというばかりでした。

◆動かしながら審査を続けて重大事故を引き起こした反省はどこに

火山灰シミュレーションで、東電や原電が行っている原発方向の風向きを関電は考慮していないなど、関電の申請内容の問題点についても聞きましたが、審査中の一点張りで回答はありませんでした。

口頭意見陳述会を通じて明らかになったのは、原発を止めない規制委の姿勢でした。現在行われている最大層厚の見直しでは、猶予期間すら定められておらず、本件についても、設置許可の審査が終わり、最大層厚が決まってから審査に入るという方針で、対応がいつ完了するのかさっぱりわからない状況です。いま火山灰が降ってきたら、関電の原発はフィルタが目詰まりし、電源がすぐに喪失するおそれがあります。

これでは保安院時代のバックチェックと同じです。原発を動かしながらだらだらとバックチェックをやっている間に福島第一原発事故が起きてしまった反省はどこにいったのでしょうか。こうした点を強く主張しました。

阪上 武(審査請求人総代・原子力規制を監視する市民の会)