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12月20日(月)に行われた原発の避難計画の実効性を問う院内集会&政府交渉についてご報告します。オンラインで80名、会場に30名の参加がありました。会場には交渉の設定をお願いした福島みずほ議員と新潟県選出の米山隆一議員が駆け付けてくださいました。

原発の避難問題について、全国各地の取組みが紹介され、交流が進みました。交渉では「避難計画はできている」と言いながら、問題を指摘すると「事故が起こってから対応する」との回答を連発。原発の避難計画の実効性がないことを改めて確認する機会となりました。

資料
長浜市・避難先非公開問題
千葉県松戸市・避難所スペース問題
屋内退避問題
女川(石巻)からの報告
質問事項と質問のポイント
島根(鳥取)からの報告
関西・福井からの報告

映像記録
https://www.youtube.com/watch?v=lgJArXnb4Q0

<院内集会>13:00~15:15

●茨城・千葉から
・エナガの会のメンバーで千葉県松戸市議の岡本さんから、水戸市からの受入れ先自治体として、感染症対策の配慮から避難所のひとり当たりのスペースを拡大し、収容人数が半減し、茨城県が計画見直しを迫られることになった経緯が報告されました。松戸市、水戸市、茨城県の議員さんの見事な連携でした。

・原子力防災を考える会@茨城で水戸の美澤さんから、エナガの会と連携して行った避難所の拡充を進めることを求める申入れ行動について報告がありました。茨城県・水戸市とも協議を進めることを約束しました。

・東海第2原発運転差止め訴訟団長の大石さんから、水戸地裁判決の意義と控訴審での課題について報告がありました。避難スペースの拡充の問題と共に、病院や介護施設の避難時の救急車や福祉車両の不足など、要配慮者の避難の困難について解説がありました。

●福井・関西から
・避難計画を案ずる関西連絡会の井野さんから、滋賀県長浜市で避難先がどこになるのか住民に告げられておらず、住民が不安に感じていることが個別訪問から明らかになったと報告がありました。

・同連絡会の増田さんから、避難訓練から明らかになった問題として、ふき取り除染では十分に除染ができない問題、安定ヨウ素剤の配布時に問診などが行われていない問題、事故時に災害対策本部となる市役所がUPZ内にあり避難先も決まっていない問題などについて報告がありました。

・災害対策本部がUPZ内にある件については、滋賀県高島市の住民の中平さんからも報告がありました。原発立地自治体の住民の方からも報告がありました。

●佐賀から
・玄海原発プルサーマルと全基を止める裁判の会の石丸さんから、避難先が決まっていない自治体がある問題、幼稚園や保育園の避難計画が明確に定められていない問題、安定ヨウ素剤の事前配布が進んでいない問題などが報告されました。

●女川(石巻)から
・女川原発を抱える石巻から、女川原発再稼働差止訴訟団の団長の原さんと事務局長の日野さんが参加されました。日野さんから、避難計画に絞り自治体を訴えた裁判は実質審議なしで終わってしまったことから、東北電を相手に裁判を起こした経緯と、この間のやり取りについて報告がありました。避難計画に実効性がないことを具体的に立証していきたいとのことでした。

●新潟から
・新潟県津南町の町議でさよなら柏崎刈羽原発プロジェクトの小木曽さんから、新潟県の検証委員会で避難問題も扱っているが、強引に終わらせようとしていること、市民側の取り組みとして、風船を飛ばす企画、検証委員会の傍聴と、傍聴を続ける人たちで避難問題の勉強会を開催していることなどが報告されました。

●島根(鳥取)から
・島根原発を抱える鳥取から、原子力防災を考える県民の会の山中さんの報告がありました。特にPAZ内の重症者など避難が困難な方の対応について、医療・介護スタッフのリスクや屋内退避がいつまで可能なのか、避難が必要になったときにどうするのかという問題提起がありました。

●屋内退避の内部被ばくリスクについて
・最後に主催者の原子力規制を監視する市民の会の阪上さんから、政府交渉のポイントについて解説がありました。

・屋内退避の内部被ばくリスクについては、最近規制委で木造家屋の被ばくリスクについての委託研究報告が行われ、屋内退避により四分の一に低減されるとの従来の見解と同様の結果がえられたとしているが、報告をよく読むと、比較的古い木造家屋の場合は半分も低減せず、そうした家屋が3割以上存在するとある、よって従来の見解を見直すべきであるとの報告がありました。

<政府交渉>15:30~17:20

内閣府原子力防災担当から3名、原子力規制庁から3名が参加し、事前質問に従ってやりとりが行われました。

1.感染症対策による避難所の拡充について

・内閣府は、すでに緊急時対応ができている地域については「避難所は余裕をもって確保しており、感染症対策を配慮した場合での避難所は足りている」との一点張りでした。

・福井・関西から、自治体アンケートにより感染症対策を実施すれば避難所は足りないとの回答があり、これを紹介すると内閣府は、具体的な避難先は「事故後に調整すればよい」と。

・市民側は、混乱を防ぐためにも避難先は感染症対策を考慮した形で決めておくべきだとし、見直しを求めました。また「避難所は足りている」との根拠について資料を請求しました。

2.要配慮者の避難について

・救急車の代わりにストレッチャー用の福祉車両を使うことはしない、救急車や福祉車両の不足については対処する、との回答がありました。

・在宅の要配慮者の支援について女川地区の緊急時対応で「支援できる体制を調整中」とある件については、消防団や自治会などで対応すると回答がありました。市民側から、民間にまかせるような方針でよいのか、いつ誰と調整して決めたのかとの指摘がありました。

3.避難訓練による問題
(1)車両の簡易除染について

・水なしと水ありでは「優位な差はない」「試験片で確認している」との回答がありました。研究結果については資料を請求しました。屋根の除染を行わないと意味がないのではといった指摘がありました。

(2)~(4)安定ヨウ素剤の配布について

・避難訓練で「問診」がない件については、緊急時配布では問診しなければならないということではないとの回答。事前配布について、内閣府は「取組みを推進している」規制庁は事前配布の条件について指針の説明。

・運転手や検査所での行政要員については、事故後配布を受け、上司の指示により服用すると回答。

・市民側は事故後では服用が間に合わない可能性が高いことから、事前配布を積極的に進めるよう改めて要求しました。

(5)防災訓練での事故想定:

・「UPZの一部も汚染されたという想定」と言うくらいで、放射能放出量などは回答がありませんでした。

(6)避難訓練時に職員が防護対策(タイベック等)をしていない点

・「放射線の低い地域でスクリーニング等をやるため必要なし」と回答。線量が高い場合は検査所の場所をその時に変えるとのことでした。

4.避難所の公開・周知について

・避難所の候補を決めただけで紐づけしない場合もある、候補について公表していない自治体もあるが避難中継所は明記されているのでよい、と回答。避難所は事故が起きてから役所に問合せて欲しいと。市民側から電話がつながる保証はなく家族がバラバラになる可能性も高まる。避難先をきちんと決めるよう指導すべきとの指摘がありました。

5.避難時の渋滞や車中の耐久時間の検討について

・緊急時対応が定められている地域では、検査所での渋滞について問題ないことを確認していると回答。女川(石巻)から、根拠を示すよう要求がありました。

6.UPZ内にある役場・市役所が災害対策本部になっている問題:

・「役場が使用できない場合は移転先を決めておくことになっている」「自然災害でもそうなっている」と回答。市民側から、また自然災害での避難先は市内の別施設であったりして原子力災害には対応できないのではないかとの指摘。また、実際には移転先が決まっていない事例が紹介されました。

7.屋内退避での被ばく低減効果について:

・規制庁は、木造家屋への屋内退避により内部被ばくが「1/4以下に低減できるというのは代表的な数字、条件によって異なる」としたうえで、「表現を変える必要はない」と回答しました。これに対し、比較的古い木造家屋に住む在宅の避難困難者を見捨てるものとの批判がありました。

追加質問 PAZの要援護者と支援者の防護対策施設での避難について:

・PAZ内の重症者などは放射能防護施設での屋内退避が基本。最大何日間そこで屋内退避を続けるかは決めていない。ここでも「事故が起こってから状況をみて判断する」との回答に終始しました。

最後に市民側から、避難先の特定など、事故が起こってから対応するとの回答が多いが事前に定めるべき、また、緊急時対応の議論が行われる地域防災協議会作業部会について議事録と資料を公開するよう求めて終わりました。