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高浜原発運転差止仮処分決定について
事実誤認は原子力規制委員会・規制庁の側
http://kiseikanshi.main.jp/2015/04/17/gonin/
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原子力規制委員会田中俊一委員長は、4月15日の定例記者会見において、高浜原発3・4号機運転差止仮処分決定について、「この裁判の判決文を読む限りにおいては、事実誤認、誤ったことがいっぱい書いてありますので」(速記録より)と述べ、決定を批判している。安倍首相は、事実誤認があると田中氏が述べていると、国会での答弁でとりあげている。しかし、以下から明らかなように、誤認しているのは、田中氏や原子力規制庁の側である。

◆使用済燃料プールの冷却設備の耐震重要度分類について

<4/15定例記者会見>
○田中委員長  私も細かいことを全部調べているわけではありませんが、耐震重要度分類で給水設備はBだと書いてありますけれども、これはSクラスです。
〇田中委員長 (略)プールの水がなくなるというのは非常に重要なことですから、そうならないようにということで、プール自体も、プールに給水するところも、あるいはプールの水を監視する水位計等も、みんな耐震上はSクラスにしています。

<決定P42>
「債務者は、電源を喪失しても使用済み核燃料プールに危険性が発生する前に確実に給水ができると主張し、また使用済み核燃料プールの冷却設備は耐震クラスとしてはBクラスであるが(別紙3の別記2の第4条2二参照)、安全余裕があることからすると実際は基準地震動に対しても十分な耐震安全性を有しているなどと主張している」

<新規制基準>(別紙3の別記2の第4条2二)
二 Bクラス
安全機能を有する施設のうち、機能喪失した場合の影響がSクラス施設と比べ小さい施設をいい、例えば、次の施設が挙げられる。
・使用済燃料を冷却するための施設

→田中俊一委員長は、使用済燃料を冷却するための施設について、Bクラスではなく、Sクラスだと言うが、これは、新規制基準の記載にも、決定文に記された債務者(関電)の主張にも反する。

→決定は、使用済燃料を冷却するための施設はBクラスだが、Sクラスと同様の扱いをしているとの関電の主張をそのまま記載しており、そのことを前提にして書かれている。何ら誤認はない。

◆外部電源の耐震重要度分類について

<4/15定例記者会見>
〇田中委員長 (略)外部電源のところですけれども、外部電源について、SBOを防ぐということで、我々は非常用発電機とか、いわゆる電源車とかバッテリーとか、いろいろな要求をしております。外部電源は商用電源ですからCクラスですけれども、非常用電源についてはSクラスになっています。ですから、ざっと見ただけでも、そういった非常に重要なところの事実誤認がいくつかあるなと思っています。

<決定P19>
(債務者の主張)「ウ 主給水ポンプ、外部電源は発電所の通常運転に必要な設備であって、安全保持のために不可欠なものではないから、基準地震動Ssに対して耐震安全性を要求されていないのに、これを安全上重要な設備とするのは原子力発電所の設計上、各設備に期待されている役割や機能を理解しないものである。」

→外部電源については、決定によると債務者(関電)は通常運転に必要なものであってSsに対して耐震安全性を要求されていない、すなわちSクラスではないと主張しているとし、田中俊一氏も外聞電源は商用電源なのでCクラスだと述べている。非常用電源について述べているわけではなく、何ら事実誤認はない。

◆入倉レシピは地震の平均像を描くもの

<4/15定例記者会見>
○渡辺安全規制管理官(地震・津波担当)付補佐 原子力規制庁の地震・津波担当の渡辺でございます。 今、ツカハラさんから御指摘がありましたけれども、我々、基準地震動に関しては、特に地震の平均というわけではないと思ってございます。原子力施設の周辺で、地震が起きるメカニズムとか、地質学的な調査をちゃんとやった上で、不確かさも十分に考慮して、敷地において起こり得るような最大級の地震を考えるというものでして(略)
○田中委員長 判決の中では平均でやっているということで、入倉先生の引用がありますけれども、入倉さんはそんなことはありませんということを他で語っているようですので、それも先ほど申し上げた事実誤認ですね、1つの。

<決定P19>
「活断層の状況から地震動の強さを推定する方式の提言者である入倉孝次郎教授は、新聞記者の取材に応じて、「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない。」「私は科学的な式を使って計算方法を提案してきたが、平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある」と答えている(甲111)。確かに、証拠(甲225、乙13)によれば、本件原発においても地震の平均像を基礎としてそれに修正を加えることで基準地震動を導き出していることが認められる。」

→入倉教授による入倉レシピについて、決定が地震動の平均像を基礎としていると指摘しているのに、原子力規制庁渡辺氏は、基準地震動は平均ではないと話をすり替えている。

→入倉レシピについては、例えば入倉氏による「強震動予測レシピ」に、「『レシピ』は同一の情報が得られれば誰がやっても同じ答えが得られる強震動予測の標準的な方法論を目指したものである。」とあるように、標準的な方法論を目指したものであり、最大級の地震動を導き出すことを目的にしたものではない。計算過程では、地震モーメントと断層面積の経験的関係やアスペリティ総面積と断層面積の経験的関係など、いくつかの経験的関係から経験式を導出し、それを用いているが、いずれも、経験値をグラフ上にプロットした上で、その平均値から経験式を導き出している。初期条件が同一であれば、同じ平均的な結論が得られるものであり、ばらつきにより最大どの程度になるのかといった考慮はない(もしそうであれば同じ答えなど得られない)。

4/15記者会見速記録 http://www.nsr.go.jp/data/000104036.pdf
仮処分決定 http://www.datsugenpatsu.org/bengodan/news/15-04-14/ より
入倉氏「強震動予測レシピ」
http://www.kojiro-irikura.jp/pdf/kyoushindouyosoku_recipe.pdf

2015.4.17
原子力規制を監視する市民の会 阪上 武