本日以下の声明を発出しました。

川内原発保安規定についての声明

川内原発保安規定(火山モニタリング)についての声明

・九電は火山ガイドが要求する兆候把握の判断基準や核燃料搬出の方針策定できなかった
原子力規制委員会は川内原発の保安規定(火山モニタリング)を却下すべきである
火山ガイドは巨大噴火の予測が不可能であることを前提に全面改定すべきである
その場合、過去火砕流が何度も到達した川内原発は立地不適となる

2015.5.27
2015.5.29一部改訂

原子力規制を監視する市民の会

原子力規制委員会は、川内原発の保安規定案を了承しようとしています。基準である火山影響評価ガイド(火山ガイド)は噴火の予測が可能であることを前提としていますが、火山学者らの指摘により、これが困難であることが明らかになり、原子力規制委員会もこれを認めざるをえませんでした。火山ガイドは、火山学会の提言に従い、見直されてしかるべきでした。

しかし、原子力規制委員会・規制庁は、火山ガイドを見直す代わりに、「空振り覚悟で対処させる」などとし、ねじ曲げて適用しました。これにより、火山ガイドが要求する兆候把握と対処の判断基準や、核燃料搬出の方針の策定が宙に浮いてしまいました。九電はこれらを申請書にも保安規定にも書くことができず、社内規定には、火山学者の批判がなかったかのように、噴火の予測を前提とした判断基準が記されている状況です。核燃料搬出の方針は書けませんでした。

すなわち、火山ガイドを満たしていない状況です。このような状況下で、火山モニタリング活動について保安規定変更申請を許可すべきではありません。その前に、火山学者の指摘に従い、巨大噴火の予測ができないことを前提に、火山ガイドを全面的に見直すべきです。巨大噴火の予測ができないことを前提にすれば、川内原発は立地不適となります。

◆予測が可能であることが前提の火山ガイド◆

火山ガイドの立地評価の原則は、「原子力発電所の運用期間中に火山活動が想定され、それによる設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価できない場合には、原子力発電所の立地は不適と考えられる。」というものです。地震の場合は、過去12~13万年前以降に動いた可能性が否定できない断層が重要施設の直下にあれば、それで立地できないことになりますが、火山の場合は、今後のことを抽象的に問うだけで、過去は問いません。それゆえ、川内原発のように、約3万年前の破局的噴火で火砕流が到達したことが明らか場所での立地に許可が下されようとしているのです。

両者の違いは、地震が予測が不可能であることを前提とし、火山は予測が可能であることを前提としている点にあります。火山の場合、運用期間中の活動可能性が十分小さいと評価された場合でも、火山活動のモニタリングと兆候は把握時の対処方針(兆候の把握と対処の判断基準、原子炉停止及び核燃料搬出の方針等)を条件に付けているのはそのためです。

◆規制委も噴火の予測は困難であることを認めざるをえなかった◆

九電は、2014年3月の適合性審査において、ギリシャのサントリーニ火山のミノア噴火の知見(ドルイット論文)をそのまま姶良カルデラにあてはめ、これを兆候と対処の判断基準とし、核燃料搬出の時間的余裕もあるとの見解を示しました。しかし、原子力規制委員会・規制庁が2014年8月に設置した火山活動のモニタリング検討チームにおいて、火山の専門家より、「ドルイット氏本人にも確認したが、論文の知見は一般化すべきではない」との指摘を受け、原子力規制委員会・規制庁は、原子炉設置変更許可申請の審査書案のパブリック・コメントの回答で、サントリーニ火山の知見は一般化できないと認めざるをえませんでした。

火山学者から数々の指摘を受ける中、巨大噴火については観測経験がなく、噴火の予測は困難であることを原子力規制委員会・規制庁も認めざるをえなくなりました。

◆原子力規制委員会・規制庁は火山ガイドを見直す代わりにねじ曲げて適用した◆

上記の経緯を経て、火山学会原子力問題対応委員会は、火山ガイドの見直しを求める提言をまとめました。しかし、原子力規制委員会は、噴火の予測は困難であるとの火山学者の指摘を受け入れた後、火山ガイドを見直す代わりに、「噴火の時期や規模を正確に予測できなくてもよい、噴火に際しては兆候があるはずで、兆候があれば空振り覚悟で対処させればよい、その判断は原子力規制委員会・規制庁が責任を持つ」などととし、火山ガイドをねじ曲げて適用することにしました。このことは、2014年9月に原子力規制委員会・規制庁がまとめた「原子力施設に係る巨大噴火を対象とした火山活動のモニタリングに関する基本的考え方」に記載されています。鹿児島地裁仮処分決定もそのように事実認定しています。

◆宙に浮く兆候把握と対処の判断基準、核燃料搬出の方針◆

しかし、この考え方では、火山ガイドが要求する、噴火の兆候把握時の対処についての判断基準や核燃料搬出の方針が宙に浮いてしまいます。いずれも、噴火の時期や規模の予測ができなければ具体化できません。

そのうえ、火山活動のモニタリング検討チームでは、原子力規制委員会・規制庁が責任を持つとした対応について検討してきたのですが、巨大噴火の兆候の把握の困難さ明らかになるばかりでした。火山活動のモニタリングについても、現状で、通常の火山に対する監視も不十分な状況であり、カルデラ火山については手つかずであること、巨大噴火を引き起こすマグマだまりの把握すらできず、そのための手法について検討しなければならない状況であることが明らかになりました。

このような状況で、九電が、カルデラ火山のモニタリング活動を具体化し、判断基準を定め、原子炉停止と核燃料搬出の方針を確立することなど不可能です。

◆保安規定に書かず・社内規定にも書かず◆

兆候把握時の対処方針について、九電は、原子炉設置変更許可申請書に具体的に書くことはできず、保安規定に書くとし、その後、保安規定の下位にある社内規定に書くとしました。社内規定は社内文書であるとして全文は公表されず、原子力規制委員会・原子力規制庁も公開を要求しませんでした。

2015年5月21日の事業者ヒアリングで公開された資料※にしても、社内規定案にある判断基準は、批判を受けたサントリーニ火山の事例をそのまま姶良カルデラに適用したもので、2014年3月のままでした。原子炉停止や核燃料搬出方針については、いつどこへどのようにどのくらいの時間をかけて運び、それが噴火に間に合うのかという基本的なものが一切書かれてません。火山モニタリングもカルデラ火山に対応したものとはいえません。これではとても火山ガイドを満足できません。

※http://www.nsr.go.jp/data/000107973.pdf (134/152~137/152頁)

◆保安規定は却下して火山ガイドの見直しを…川内原発は立地不適に◆

火山モニタリング活動について保安規定変更申請を許可すべきではありません。その前に、火山学者の指摘に従い、火山ガイドの全面的な見直しを実施すべきです。予測ができないことを前提にすれば、川内原発は立地不適とすべきです。

原子力規制を監視する市民の会
問合せ:090-8116-7155阪上まで