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みなさまへ(拡散希望)

経産省講堂にて、ALPS処理水小委員会の会合が開かれました。福島第一原発のタンク中の汚染水について、トリチウム以外の放射能が多量に含まれていることが明らかになり、また8月末の公聴会で海洋放出への批判が相次いだ後のはじめての会合です。傍聴してきました。今日は主にトリチウム以外の放射能の現状について東電から説明がありました。

http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/010_haifu.html

〇ストロンチウムは出口で告示限度の最大数十万倍、タンクで約2万倍
〇東電…再度のALPS処理は環境への放出が前提
〇濃度でしか議論せず…総量をリスクとして捉えて議論すべき

会合では、公聴会で寄せられた意見のまとめのあと、トリチウム以外の放射能についてタンク水の現状について東電から報告を受けました。

会合に先立って、東電は既にタンク水中のトリチウム以外の放射能について発表しており、昨日までに、最大で告示濃度限度の2万倍のストロンチウムが含まれているなどと報道されていました。

東電は会合で、放射性ヨウ素などの放射能が、告示濃度限度を超えたのは、2013~2015年度までの時期と2017年度~の時期で、原因は、2013~の時期は、性能が不十分であったこと、不具合があったこと、敷地境界1ミリ以下を達成するために吸着材の交換頻度を下げたこと、2017~の時期はフランジ型タンク内の水の処理を急いだためにやはり吸着材の交換頻度を下げたことだと説明しました。

2014年には設備の不具合のために前処理ができずにストロンチウムがスルーしたものがあり、出口濃度で告示濃度限度の数十万倍(資料からの読み取り)、タンク内で約2万倍となったものもあったと。

東電は、委員にも国民にも説明が不十分だったと陳謝しました。委員から、国民の関心時であるのに、問題はトリチウムだけと聞かされていた、なぜ知らせようとしなかったのかと詰め寄りましたが、東電は、関心がずれていたというだけでした。

会合では、告示濃度限度を超えるものがタンク内に送られたことについて、規制上の取扱いも問題になりました。会合に参加していた規制庁の今井氏は、ALPSの実施目的に告示濃度限度以下に低減するとの記載があり、告示濃度限度を超える処理水が生じることは適切ではないと回答しました。委員から、であれば、薄めて告示濃度限度以下にすればよいとの更田委員長の発言は問題ではないかと問いましたが、今井氏は答えることはできませんでした。

また、東電は会合で、処理水の二次処理についても言及しました。放射性ヨウ素などを告示濃度限度以下にするため、ALPSに再度通すないしは逆浸透膜装置を通すというものですが、東電が会合で示した資料には「環境へ放出する場合は処分前に…二次処理を実施」とあり、環境への放出が前提となっています。

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委員はこの点をスルーして、処理水を二次処理してまたタンクに戻すとの意味合いでとらえて前向きに評価し、説明にあたった東電の松本氏もそのような理解でよいと回答していました。会場から、環境への放出を前提とするとの記載に対して疑問の声があがりました。

山本委員長も二次処理の方針を持ち上げて終わったのですが、不安を感じた委員から、終了直後に発言があり、タンクの保管について今後検討することの確認がありました。結局、二次処理について、環境への放出を前提にするのかは不透明なままでした。

放射能のリスクについては、濃度ではなく総量で議論すべきという意見が公聴会でも多数でました。しかし会合では、トリチウム以外の放射能については、総量も示されず、濃度の議論に終始しましました。それでは薄めて放出するのも二次処理も同じことになってしまいます。ストロンチウムやヨウ素は、環境中に出ると生体濃縮がすぐに問題になる放射能です。総量を明らかにしたうえで、総量をリスクとして捉えないと、二次処理についての議論はできないと思います。

阪上 武(原子力規制を監視する市民の会)