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11月7日(水)10時から原子力規制庁において、川内原発の火山モニタリングに関する保安規定認可に対する異議申し立ての意見陳述会が開催されます。申し立ては2015年7月ですから3年以上経過していますがようやく意見陳述会が開かれることになりました。総代の阪上が陳述します。

◆川内原発火山モニタリング保安規定認可に対する異議申し立て意見陳述会
11月7日(水)10:00~11:00
原子力規制庁13階会議室D
意見陳述人 総代 阪上 武 090-8116-7155

以下、簡単な経緯と陳述内容です。

<経緯>

・2015年5月27日の規制庁による九電川内原発の火山モニタリングに関する保安規定の認可処分に対し、処分の取り消しを求めて、同7月23日付で、513名の申立人により、行政不服審査法に基づく異議申し立てを行った。主な理由は、九電が、既存の観測により、核燃料搬出の十分な時間的余裕をもって噴火の予測が可能だとし、規制庁がそれを前提に認可したのに対し、規制庁が設置した検討会においても、専門家らがそのような予測は困難であるとし、対処方針や判断基準の検討を今後の課題としていることから、認可処分が火山ガイドおよび新規制基準の規定に違反すると認めたためである。

・申し立てから3年以上経ってようやく口頭意見陳述会が開催されることとなった。この間に、原子力規制委員会の火山部会において、九電のモニタリング状況についての報告や規制庁による原発停止等の判断基準についての検討が行われ、また裁判において、原発周辺の火山の噴火予測に関係する判断がいくつか下され、原子力規制庁により、巨大噴火リスクは事実上無視してよいとする「火山ガイドについての考え方」が示されたことなどの動きがあり、改めて意見を述べることとした。

<陳述予定概要>

1.火山部会での検討・議論について

・火山部会は、年1回程度開催され、九電による、主にGPSの位置情報に基づくモニタリング結果から、対象火山について、異常な傾向はみられない、姶良カルデラについては地下の膨張が確認されているが、傾向からの逸脱は確認されないとの報告があり、承認されている。

・しかし、モニタリング対象の鬼界カルデラについては、神戸大学巽教授らの観測、研究により、前回の破局的噴火以降、新たなマグマの急激な蓄積の可能性について指摘する論文が出されている。九電の現状のモニタリングでは、この状況はまったく捉えられていない。

・巽教授の研究は、鬼界カルデラの破局的噴火を予測するものでないし、例え破局的噴火が発生しても火砕流が川内原発に届くことはないかもしれない。しかし、巨大噴火や破局的噴火に備えた火山モニタリングのあり方をこのことによって検証することは必要であるし、鬼界カルデラで巨大噴火や大規模噴火があれば、川内原発に影響を及ぼすのは必至である。原子力防災の真価が問われるのはむしろこの規模の噴火かもしれない。

・火山部会では並行して、原子力規制庁側で、原発の停止や核燃料搬出の指示を出す判断基準についての議論が続いているが、原発の停止指示について、大規模噴火(桜島大正噴火)レベルの噴火について、噴火前に停止指示を出すとの目標が示された。大規模噴火レベルは、兆候現象について経験があるが、数日前からせいぜい数か月前など直前にならなければ確証的なことはわからず、長期の予測は困難であるという。破局的噴火に備えた核燃料搬出指示については中長期的な課題とされている。巨大噴火や破局的噴火は、噴火のメカニズムが大規模噴火と異なり、これら噴火の予測を大規模噴火の予測の延長線上で議論することには疑問がある。また、保安規定の認可から3年以上経過しているが、火山ガイド違反状態が継続していることは、この議論の状況からも明確である。

2.この間の裁判の決定と「火山ガイドについての考え方」について

・川内原発運転差止の仮処分につき、鹿児島地裁、福岡高裁宮崎支部で決定が下された。このうち、2016年4月16日の福岡高裁宮崎支部決定では、原発の運用期間中に破局的噴火の発生可能性が十分に小さいとは言えないとしたうえで、破局的噴火は、発生頻度が低く、被害があまりに甚大で、無視するのが社会通念であるとし、少なくともVEI7以上の破局的噴火については、発生可能性が根拠をもって示されない限りは、立地不適としなくてもよいとし、運転差止を認めなかった。これに対し、伊方原発の差止仮処分において、広島高裁抗告審は2017年12月13日に、同じく原発の運用期間中に破局的噴火の可能性が十分に小さいとは言えないとしたうえで、火山ガイドは社会通念を含めて作られているとし、火山ガイドに従い差止を認める決定を下した。その後、2018年9月27日の異議審決定において、福岡高裁宮崎支部決定と同じ趣旨で、差止め決定を覆した。

・原子力規制庁は、広島高裁抗告審の後、3月7日に「火山ガイドについての考え方」を定めたが、その内容は、巨大噴火は発生頻度が低く、被害が甚大であり、無視するのが社会通念であることから、発生可能性が根拠をもって示されないかぎりは、発生可能性が十分に小さいとはいえないとみなすというものである。福岡高裁宮崎支部決定の内容を踏襲したものだが、決定と異なるのは、電力会社が、破局的噴火の可能性が十分に小さいことが立証されているとの判断は変えていないことと、無視する噴火の対象を、破局的噴火(VEI7レベル)から巨大噴火(VEI6レベル)に広げていることである。

・社会通念論は、一般の建築物の安全性と原発の安全性を同列に扱う考え方であり理解に苦しむ。むしろ福島第一原発事故以降、原発の運転には特段の安全性が要求され、特別扱いされてしかるべきだというのが社会通念ではないか。破局的噴火そのものにより破滅的被害がもたらされにしても、原発によりさらに被害を拡大し、生き残った人たちの未来を奪うことは許されないのではないか。また、破局的噴火や巨大噴火について、政府が防災の対象にしておらずそれを国民が認めているというが、火山学会など専門家らは巨大噴火についても防災に取り組むよう要請しているし、国民もよく知らないだけではないか。

・原子力規制委・規制庁が巨大噴火のリスクを事実上無視するというのは全く理解できない。破局的噴火の可能性が十分に小さいことが立証されているというのであれば、このような「解釈改憲」の必要はないし、川内原発の保安規定に基づくモニタリング活動とも矛盾する。

・また、裁判所の決定と異なり、対象を巨大噴火レベルに広げたことも問題だ。対象を広げた科学的根拠は何も示されていない。場所や風向きにもよるが、巨大噴火レベルであれば、防災活動をあらかじめ行うことにより、被害を低減できる可能性が十分にあるし、逆に原発による地球規模の放射能被害を追加するようなことはあってはならない。

・川内原発についていえば、火山灰の影響評価では、現実に起こりうる噴火として、巨大噴火レベルの桜島薩摩噴火を想定している。同じ噴火規模で、火山灰では具体的に対策し、火砕流については無視してよいとなってしまう。この矛盾をどう説明するのか。いずれにしろ「火山ガイドについての考え方」は撤回すべきだと考える。

・規制庁が対象を巨大噴火に広げたことにより、六ヶ所再処理施設の審査における十和田カルデラの巨大噴火リスクの検討に影響している。このリスクを事実上無視することが対象を広げた目的であれば本末転倒である。規制庁の存在意義を疑わざるをえない。

・また、青森県むつ市のリサイクル燃料貯蔵施設は、過去3回にわたり、敷地内に恐山の噴火による火砕流が到達しているが、噴火規模はいずれも小さく、最小で噴火指数3の中規模噴火レベルである。火山部会での議論からも、モニタリングをしても、火砕流到達前に燃料体の搬出を終えることは不可能ではないか。このような状況で火山モニタリングに関する保安規定の認可はできない。

阪上 武(原子力規制を監視する市民の会)
090-8116-7155