感染症対策と原発避難は両立しない! 原発の稼働をとめるしかない!

20200626

原子力規制を監視しようニュース200626

◆新型コロナ災害のもとで原発事故が発生したらどうなるのか

新型コロナ感染症は第二波が懸念されていますが、拡大を防止するために、三密を避けるなどの対策が日常的に求められています。こうした状況で、原発で重大事故が発生した場合、避難は可能なのでしょうか。災害と新型コロナ対策の関係では、台風等による風水害の避難をどうするかという問題が提起されていますが、原発はどうなのでしょうか。あるいは、風水害や地震などと原発事故との複合災害がこの新型コロナ災害のもとで発生したらどうなるのでしょうか。

◆女川原発の避難計画に感染症対策が盛り込まれたというが

政府が設けた原子力防災会議は、はじめて新型コロナ感染症対策を盛り込んだとされる女川原発の避難計画を6月22日に了承しました。議長の安倍首相は「被ばく防護措置と感染防止対策の両立を図った」と述べています。しかしその内容は、以下に示すように問題だらけです。(写真は女川原発)

◆屋内退避による密閉は避けられない

矛盾がすぐに生じるのが、30キロ圏のUPZ内の住民が強いられる屋内退避です。原子力防災では、放射線被ばくを防ぐために、窓を閉めて目張り、エアコンを止め、とにかく換気してはならないとなっています。これは、三密の一つ「密閉」を積極的に行うことになり、新型コロナ感染症対策と矛盾します。女川原発の避難計画では、被ばくを避けることを優先せよとなっています。すなわち、窓を閉じて換気をするなということです。屋内退避による密閉は避けられないことになります。

◆軽症感染者、感染の疑いがある者とそれ以外の者をどうやって振り分けるのか

女川原発の避難計画では、重症者は指定医療機関で治療、感染者(軽症者等)とそれ以外の者は、別のバス等で極力分散して移動し、避難所も別にするとしています。資料の脚注には、濃厚接触者、発熱者等の感染の疑いがある者、またはそれ以外の者は、可能な限りそれぞれ別々に避難(車両、避難所等)とするという記載もあります。

まず、軽症感染者、感染の疑いがある者とそれ以外の者をどうやって振り分けるのでしょうか。放射線の検査だけでなく、PCR検査などが必要となりますが、どのような体制をとるのでしょうか。全く不明です。

◆別々の車両で運ぶというがバスの手配はどうするのか

さらに、別々の避難所に別々の車両で運ぶとありますが、感染の疑いがある者はどちらに入いるのでしょうか。それとも、重症者、軽症者、疑いがある者、その他の4つに分けるのでしょうか。濃厚接触者と発熱等感染の疑いがある者は分けなくてもよいのでしょうか。

そうした場合、バスの手配はどうするのでしょうか。軽症感染者のバスは誰が運転するのでしょうか。バスの台数は足りるのでしょうか。バスの中でも分散するとあります。1台当たりの定員を予定の半分程度とすれば、それだけでも2倍の台数が必要です。

◆個室の避難所をどうやって確保するのか

避難所についても同様です。軽症感染者、感染の疑いがある者、その他の者に分けるのであればそれだけでも避難所は足りなくなります。それに、避難計画では、各避難所で密集を避けるとありますが、その場合、体育館などではなく、個室の確保が必要となります。避難計画では、軽症感染者についてだけ「個室等に避難」とありますが、感染拡大防止の観点からは、感染の疑いがある者やその他の者についても、何百人もの人を体育館にというわけにはいきません。個室等への避難が求められます。

◆重症者がいる指定医療機関が避難対象となった場合

重症者については、感染症指定医療機関等で治療となっていますが、そうした医療機関で避難が必要になった場合はどうするのでしょうか。通常でも困難な医療機関の避難に、さらなる困難が課せられることになります。(↓女川原発の避難計画の説明資料:内閣府HPより)

◆新型コロナ感染症対策と原発避難は両立しない!再稼働を止めるしかない!

女川原発の避難計画に書かれている感染症拡大防止策は、実効性に乏しく、不可能なものばかりです。原発避難と新型コロナ感染症対策は両立しません。私たちは今まさに新型コロナ災害のただなかにいます。女川原発だけでなく、再稼働が問題になっている東海第二原発、柏崎刈羽原発などでも、この点について検証が必要ですし、実効性が確認できない以上、再稼働の手続きは中止すべきです。稼働中の原発についても直ちに運転を止めるべきです。

生活協同組合パルシステム東京の助成により作成しています。郵便振替00140-5-44967原子力規制を監視する市民の会