新型コロナ時代の電力供給 原発・石炭火力とめて太陽光・風力へ

20200703

原子力規制を監視しようニュース 200703

◆石炭火力の廃止は非効率なものだけ「高効率」のものは逆に拡大もありうる

昨日、政府が非効率な石炭火力を2030年度までに段階的に廃止することを検討していることが、報道により明らかになりました。具体的には「非効率石炭火力」の9割(100基程度)が休廃止されます。石炭火力の廃止はよいことですが、対象は旧式のものに限られ、「高効率」のものなどは逆に維持・拡大するとしています。石炭火力の輸出についても止める気はありません。同日経産大臣は記者会見で、六ヶ所再処理工場の再処理事業を積極的に進めると述べました。原発と石炭火力優先の姿勢に変わりはありません。

◆原発や石炭火力を優先して出力抑制を行う九州電力

新型コロナ災害により、電力需要が低下する中で、どの電源を優先するのか、石炭火力や原発を優先するのか、太陽光や風力を優先するのかが問われています。

九州電力は、コロナ以前から、電力需要が低下し続ける中で、電力供給が過多となる時期に事業者に一時的な発電停止を求める「出力抑制」を行ってきました。九州では太陽光発電が盛んにおこなわれ、発電所もどんどん増えています。風力発電も徐々に増えてきているのですが、九電は原発や石炭火力を優先し、太陽光や風力などに対し、出力抑制を行っています。

九電によれば、2019年度に、太陽光発電44.3万MWh、風力発電1.5万MWhが出力抑制の対象となりました。九州では2019年度、太陽光発電設備で発電し得る総電力量の4.1%が、風力発電設備で発電し得る総発電電力量の2.3%が無駄に捨てられたことになります。

◆新型コロナ災害で出力抑制は増加

2020年度の抑制回数はさらに増えています。右の表は、もっとも最近に出力抑制が行われた6月22日のものです。太陽光の抑制量が42万kWとなっています。

九州ではこの1年で再エネの導入量は大幅に伸び、太陽光は9440MWに、風力発電は580MWに達しました。しかも、接続検討の申し込み済み未稼働案件が、太陽光発電は6620MW、風力発電に至っては1万3150MWもあるといいます。まだまだ増え続ける状況です。他方で、コロナ禍により工場や事業所の操業を停止する企業が相次ぎ、電力需要が減少しています。

九電は、テロ対策工事の遅れから川内原発の稼働を停止しました。稼働中の原発は玄海原発の2機しかありません。これにより再生可能エネルギーなどの出力抑制の頻度が減少するとの予想もありましたが、4月は22回、5月も16回で昨年を上回るペースとなりました。原発と新設の松浦火力発電所(石炭火力)などを優先し、太陽光や風力による電気を捨てているのです。

◆東北電力は出力抑制を回避し再エネ比率は77%越え

東北6県と新潟県の電力需要に占める太陽光・風力発電比率(速報値)が、5月の大型連休中に過去最高の77.5%に達したことが分かったと報じられました。新型コロナウイルスの影響で大口需要が減ったとみられる一方、太陽光や風力の発電量が大きく伸びたのです。

東北電力ネットワーク(仙台市)によると、晴天となった5日の午後0時台、需要約709万キロワットに対し、太陽光と風力の出力は過去最高の計約550万キロワット(太陽光約510万キロワット、風力約40万キロワット)に上りました。

7県では大型連休中、政府の緊急事態宣言や自治体の休業要請を受けた大型商業施設の休業、工場の稼働停止が続き、日中の需要は前年同時期より約5%減少。太陽光・風力の発電比率は2日にも71.0%を記録しました。東北電力は、火力発電の出力抑制により、「出力制御」は回避したといいます。(河北新報による:図も河北新報から)

東電Jヴィレッジ汚染土除染せず返還

東電が福島第一原子力発電所事故の収束作業の前線基地として使用していた、サッカーのナショナル・トレーニング施設「Jヴィレッジ」を、放射性物質で汚染された土壌の除染を国が定めたルールどおりに実施せずに持ち主の財団に返還していたことが明らかになりました。東洋経済岡田記者の記事…「Jヴィレッジ 除染」で検索してください。

バックフィットでも原発止めない規制委

関電火山灰問題を手掛かりに、バックフィットといいながら基準不適合でも原発を止めない規制委の姿勢を批判する毎日新聞日野記者の渾身の記事がWEBアップされました。…原子力規制委員会は、福島の原発事故を教訓に、既存の原発に追加の安全対策を課す「バックフィット」に力を入れる姿勢をアピールしている。しかし、基準不適合と評価した原発を停止させたり、改造させたりする命令の発令はわずか1件。法改正して手にした権限は「抜きたくない宝刀」となっている。…「毎日新聞 バックフィット」で検索してください。

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