みなさまへ(拡散歓迎)

12月22日午後、参議院議員会館にて、大飯原発設置許可取消し判決をめぐり院内集会と政府交渉が行われました。

集会には、原告共同代表の小山さん、アイリーンさん、原告の島田さん、武藤さん、福井から原告の石地さんも参加されました。FoEの満田さん、技術スタッフの松本さん、会場には後藤さん他のみなさんとメディアのみなさん、院内集会に立憲の山崎誠議員、政府交渉には設定をお願いした福島みずほ議員が参加されました。ズームとYouTubeのオンライン参加を含めて80名近い参加となりました。

交渉には、原子力規制庁の法務部と実用炉審査部門と企画調整課から参加し、うち法務部と実用炉審査部門の地震担当の人が主に対応しました。

◆訴訟当事者であることを理由に発言を遮る原子力規制庁の法務部

法務部の人は決まり文句のように「本日は大飯原発の判決についての意見交換と聞いているが、訴訟に関わる内容について、訴訟当事者が法定外で議論するのは適切ではない」と繰り返し、回答を拒否する場面が何度もありました。

もともとこの場は、判決が出る前から準備をしていました。12月4日金曜日の判決後、次の月曜日及び木曜日の設定に対しては、議論したことが証拠として不利に使われるおそれがあるので何も言うことができない、控訴の判断を期限までに行わなければならず担当者全員が忙しい、などという理由で断ってきました。控訴期限の後に改めて設定してようやく実現したものです。

その一方で、更田委員長は「解釈がおかしい」「内向きのサービスでつくったガイドを勝手に解釈された」「理系でないとわからない」などと判決を小馬鹿にして言いたい放題。あげく原子力規制委員会の名で「基準地震動の策定に係る審査について」なる文書を出し、判決のはの字もないのに内容は判決を批判するものになっていて、これも裁判外で言いたい放題。

こちらからは、「基準地震動の策定に係る審査について」については説明責任があるはず、更田委員長も言うように被告は国であり原子力規制委員会ではない、その事務方としての原子力規制庁と市民との意見交換であり被告対原告の場ではない、この場には原告でない人もいるが、原告が出て行けば話すのか、福井に説明に行ったときも訴訟中なので何も答えないのか、などと具体的な回答を求めました。福井から参加の石地さんは、福井でもこの場でもきちんと説明して欲しいと。最後は福島みずほ議員が「ここは国会です」「『なぜばらつきを考慮しなかったのか』という単純な問いかけに明快に回答して欲しい。それくらいできるでしょう」と一喝。

こうしたやりとりもあって、法務部の横にいた実用炉審査部門の地震担当が、法務部の妨害をかわしながらかろうじて答えてくれました。

◆ばらつき条項が福島原発事故後に追加された意味

やりとりでは、まず「基準地震動の策定に係る審査について」にある「入倉・三宅式を用いて地震モーメントを計算する際、式の基となった観測データのばらつきを反映して計算結果に数値を上乗せする方法は用いていない。」との文言について、上乗せしてばらつきの考慮することはやられていないことを確認しました。

そしてそれがガイドのばらつき条項に反するのではないか、となるのですが。問題の条項はガイドの以下の2文。このうち第二文がばらつき条項といわれるものです。

(1)震源モデルの長さ又は面積、あるいは1回の活動による変位量と地震規模を関連づける経験式を用いて地震規模を設定する場合には、経験式の適用範囲が十分に検討されていることを確認する。
(2)その際、経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから、経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある。

実用炉審査部門の地震担当の人は、(1)と(2)は一体だとしながら、ばらつきについては触れず、経験式の適用範囲について、すなわち(1)についての説明に終始しました。(2)については、(1)の経験式の適用範囲についての検討に際して認識すべきことを述べただけにすぎないと。

これに対し原告・市民側は、(2)は当初はなかかった。それが福島第一原発事故を経験し、時間をかけた審議の結果、新規制基準ができたときに新たにわざわざ追加された経緯、意図、趣旨を考えて欲しい、審議会の主査は、入倉・三宅式の入倉氏だったが、彼ももばらつきの考慮を要求していた、(2)については、不確かさの考慮とは独立に、ばらつきの考慮をそれはそれでやりなさいとしか解釈のしようがないと指摘。

地震担当の人は神妙な面持ちで聞き、いろいろと説明を試みていました。真面目な人のようですが、白を黒というために必死に説明するのはやめて、黒を黒と認めてはどうかと思いました。

大阪地裁での裁判では、裁判所が、ばらつきを考慮した場合の定量的な評価と合わせて、第二文のばらつき条項が、福島第一原発事故後に追加された意味を考えよと、被告に釈明を求めたということです。その意味について理解が進んだと感じました。

東日本大震災で被災し、放射能の恐怖を肌で感じた武藤さんから、ばらつき条項が福島第一原発事故後に追加されたことの意味は大きいとする発言がありました。

阪上 武(原子力規制を監視する市民の会)