みなさまへ (拡散希望)

11月7日(月)に原発の運転期間延長の撤回を求める院内集会・署名提出及び政府交渉を行いました。リアルで約50名、オンラインで約80名の方が参加しました。国会議員は、岩淵友議員、菅直人議員、山崎誠議員、福島みずほ議員にご参加いただきました。設定は福島みずほ議員にお願いしました。

院内集会では、主催者から原発の運転期間延長の政府側の動きについて、また論点の一つ目であるこの間の規制委の運転期間制限の撤回の動きについて解説がありました。論点の二つ目である中性子照射脆化の問題について、老朽原発40年廃炉訴訟市民の会の柴山恭子さんから解説がありました。井野博満さんからコメントをいただきました。論点の三つ目である電気ケーブル劣化の問題について、美浜の会の小山英之さんから解説がありました。その後、福島、福井、鹿児島、新潟、宮城、佐賀の各地から報告を受けました。

運転期間「原則40年」既定の削減方針の撤回を求める署名の第一次集約分、個人3,663筆、団体賛同97団体について原子力規制委員会委員長、経済産業大臣宛て提出しました。 署名は12月末まで行っています。ぜひご協力ください。

<署名>原発の運転延長に反対!

政府交渉は原子力規制庁から4名の職員が参加しました。資源エネルギー庁からは文書回答がありました。3つのテーマについて、事前質問に沿ってやりとりが行われました。

■運転期間の定めについて
〇40年ルールは制定過程からも明らかに「利用政策」ではなく「安全規制」であり規制委は厳格に守るべき
〇規制庁は40年の運転期間は「立法政策」により定められたことは認める
〇原子炉等規制法は規制委の所掌であり他の省庁が変更できないことは認める

交渉は主に以下の点について議論しました。

1.規制委山中委員長は「原子炉等規制法の関係条文の運転期間の定めについては2年前に既に議論したが、利用政策の判断によるものであり、委員会は意見を申すところではない」としたうえで、運転期間の定めを原子炉等規制法が「抜けてしまう」という言い方で原発の運転期間制限の撤廃を認める発言を繰り返しているが、40年ルールは利用政策ではなく安全規制として原子炉等規制法に組み込まれたものであり、利用政策判断というのは事実誤認ではないか。

2.山中委員長が根拠とする2年前の「見解」は、長期運転停止の期間を運転期間から除外することについての見解であり、原子炉等規制法の規定の範囲内で意見交換を行ったものにすぎない。また「見解」の文言に従っても、現行の条文にある40年の運転期間の定めは「立法政策」によるものである。

3.40年ルールは福島原発事故の教訓として安全規制として定められたものであり、原子力規制委員会こそ厳格に守るべき法令ではないか。

規制庁は「運転期間の定めは利用政策によるもので規制委が意見を言う立場にはない」との文言を繰り返し述べました。2年前の見解に「立法政策」とあることについて、規制法は国会の審議を経て与野党合意で定められたものであることは認めました。また、原子炉等規制法には利用政策の文言はないこと、原子炉等規制法は規制委が所掌しており、他の省庁が変更できないことも認めました。一方で、原子炉等規制法で運転期間を定めた43条のうち、規制委の事務は5項だけだとして、40年ルールを切り離す矛盾する発言をしていました。

40年ルールは、福島第一原発事故の教訓として、原子力規制委員会設置法とセットで、「利用と規制の分離」が問題となる中、規制に関する条項を原子炉等規制法に一元化する作業と同時に、原子炉等規制法に「安全規制」として定められたというのが事実です。資源エネルギー庁も、原子炉等規制法は規制委が所掌しているので意見はしないと言っています。事実に反する前提で規制を投げ出すのではなく、厳格に守るべきであると改めて強調しました。

■中性子照射脆化について
〇監視試験について関電は母材と溶接金属を交互にしか行っていない
〇監視試験の原データや重要な評価の条件について規制委は確認せず
〇監視試験の実施方法について明確な基準を持っておらず事業者任せ

交渉は主に以下の点について議論しました。

1.関電は他の電力会社とは異なり、監視試験片を用いた破壊靭性試験は、1回目と3回目が母材、2回目と4回目が溶接金属と交互にしか行っていない。他の電力会社は毎回両方を行っている。規制委はそれでも関電の審査を通している。

2.加圧熱衝撃の評価においては、熱伝達率の数値が大きく影響するが、この数値について、規制委は審査において確認していない。

3.監視試験片のカプセルが、原発の運転期間30年程度を想定していることを占めす論文がある。

規制庁は、関電の監視試験片カプセルのうち破壊靭性試験の試験片が、カプセルごとに母材のみ、溶接金属のみが入っていることを明らかにしたうえで、交互で取り出して試験を実施しても安全確認はできると言い張りました。市民側からは、母材と溶接金属の両方を毎回行うよりも危険側の評価になるのは明らか、関電のやり方だと母材と溶接金属のまったく性質の異なる金属の試験結果をごっちゃにして予測式を作らなければならず、予測式の信頼性が失われるし、現に以前の予測があわない結果となっている、といった指摘がありました。試験の実施方法について、規制側で基準がなく、事業者任せになっていることも問題です。

加圧熱衝撃の評価に影響する熱伝達率の数値について、規制庁は、審査において確認していないことを前提に、すべての原データを確認しているわけではない、必要なデータは確認しており、それは審査書にすべて記載していると回答しました。しかし熱伝達率については、評価結果に影響を与える数値ですので、確認すべき「必要なデータ」ではないでしょうか。ここでも、事業者任せの実態が明らかになりました。

監視試験片のカプセルが運転期間30年程度(照射期間32年との記載がある)を想定していることを示す論文について、規制庁からは、照射期間と運転期間は違うとの説明があっただけでした。加速照射の話が入り少し混乱があったのですが、規制庁は「稼働率80%を想定すると40年程度になる」と述べ、いずれにしろその程度の想定しかしていないことを認めました。

■電気ケーブルの劣化について
〇規制庁「『有意な絶縁低下が生じないこと』が基準だが明確な数値的基準はない」
〇ケーブルが蒸気暴露の初期に一気に絶縁抵抗が下がる現象については再質問

交渉は主に以下の点について議論しました。

1.関電は、高浜1号炉の炉心近くにある電気ケーブルについて、「破断時の伸び」の程度に基づき、106年は使用可能と判断し、規制委は運転延長を認可している。しかし、106年の評価にはJNES(原子力安全基盤機構・現在は原子力規制庁技術基盤部)のレポートが求める安全余裕が考慮されていない。

2.さらに、運転期間延長審査基準では「破断時の伸び」ではなく、「有意な絶縁低下が生じていないこと」が判断基準となっている。その場合、「有意な絶縁低下」について、明確な数値的な基準はない。

3.JNESのレポートによると、重大事故時にケーブルが蒸気にさらされる(蒸気暴露)とショートなどの故障が多く発生している。また、規制委の技術報告(2019.11)において、重大事故時にケーブルが蒸気にさらされると、初期に一気に絶縁抵抗が下がり、蒸気暴露停止後にかなり回復する現象が明らかになっている。今後も検討が必要と結論しているが、その前に認可された高浜の審査では反映されていない。

規制庁は、運転延長認可の審査基準は「有意な絶縁低下が生じないこと」であり、これを確認しているので問題ないとの回答を繰り返しました。実態としては「破断時の伸び」を用いた評価を行っているのですが、規制庁は認めようとしませんでした。では絶縁低下について具体的な判断基準はあるのかと問うと、性能規定であり、数値的な基準はないことを認めました。これでは、関電が「有意な低下はありません」と言えばそれで合格になってしまいます。

蒸気暴露の初期に一気に絶縁抵抗が下がる現象を問題にした規制委報告について、規制庁は高浜の審査には影響しないとの立場でした。絶縁性能を調べる際の課電の条件がJNESの報告と違うことなどを問題にしようとしましたが、出席した担当者が答えられなかったので、後ほど文書で質問し回答をもらうことにしました。

本日の資源エネルギー庁の原子力小委員会において、運転期間の定めを電気事業法に移した上で運転期間の延長の方策を探る議論が行われています。危険な運転延長をとめるために今後も連携してがんばりましょう!

原子力規制を監視する市民の会 阪上 武