老朽原発の新たな審査基準案
<パブコメ文例集>パブリック・コメントを出そう!
・GX電源法のうち、原発の運転延長を実行するための規則案や新たな審査の審査基準案がパブリック・コメントにかかっています。危険な老朽炉の運転に反対して意見をだしましょう!
・対象文書は4件ですが、原発の安全確保に関わる問題は、老朽原発の新たな審査の審査基準案である★実用発電用原子炉の長期施設管理計画の審査基準(案)に集約されています。こちらだけでもぜひ意見を出しましょう。
老朽原発の新たな審査基準案
<パブコメ文例集>パブリック・コメントを出そう!
2023年8月1日版
原子力規制を監視する市民の会
・GX電源法のうち、原発の運転延長を実行するための規則案や新たな審査の審査基準案がパブリック・コメントにかかっています。
・対象文書は4件ですが、原発の安全確保に関わる問題は、老朽原発の新たな審査の審査基準案である★実用発電用原子炉の長期施設管理計画の審査基準(案)に集約されています。こちらだけでもぜひ意見を出しましょう。
・新しい審査制度は「長期施設管理計画の審査」という名称で、原発の運転開始30年目から「10年以内毎」に劣化点検や劣化評価に基づき長期施設管理計画を提出して審査を受けます。40年目には特別点検を実施することにしています。従来の2つの制度(高経年化技術評価及び運転期間延長認可)を合わせたもので、違いは「10年毎」を「10年以内毎」にすることや、60年目及びそれ以降も実施することくらいで、審査の内容はほとんど変化がありません。
締切り8月4日(金)まで
〇脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則等の改正案等に対する意見公募について
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=198023101&Mode=0
対象文書 ★実用発電用原子炉の長期施設管理計画の審査基準(案)/実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則等の一部を改正する規則(案)/他1件
〇実用発電用原子炉の長期施設管理計画の記載要領(案)に対する意見公募について
対象文書 実用発電用原子炉の長期施設管理計画の記載要領(案)
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=198023204&Mode=0
関連資料 令和5年度第20回原子力規制委員会資料1
https://www.nra.go.jp/data/000439952.pdf
問合せ 原子力規制庁原子力規制部原子力規制企画課 03-5114-2109(代表)
◆全般的な意見
1.法改定の根拠がない
・原発の運転期間の定めを規制側の原子炉等規制法から推進側の電気事業法に移し、長期停止期間中を運転期間から外し60年超の運転延長を認める今回の法改定について、規制委の石渡委員は反対しました。
・石渡委員は法改定に反対する理由として、①安全側の改定ではなく40年60年の枠組みが維持されるのであれば炉規法から電事法に移す理由はない、②根拠とされた令和2年7月29日規制委見解は意図が違う、③規制委が安全のために丁寧な審査を行うことで事業者はより危険な高経年化した原発の運転ができるようになるというのは矛盾である、の3つをあげました。
・国会審議では、疑問が晴れることはなく、逆に、原子炉等規制法の運転期間制限は安全の観点から定められたこと、令和2年7月29日の規制委見解は停止期間中の運転延長を規制委が拒否するものであったことなど、石渡委員の指摘の正しさが明らかになりました。石渡委員は新たな審査基準案等にも反対しています。
<意見例>
国会の審議において、原則40年の原発の運転期間の定めは、「安全上のリスクを低減する」(2012年当時の内閣府作成の解説文書)趣旨により、「安全上の観点から」(衆議院予算委員会2月15日岸田首相の答弁)、原子炉等規制法に盛り込まれたことが明らかになった。規制側の原子炉等規制法から推進側の電気事業法に移す根拠はなく、はじめから議論をやり直さなければならない。
2.規制の強化どころか大幅に緩和されている
・規制委は法改定の事前評価書において、今回の法改定は規制の緩和ではなく拡充であるとしています。しかし、老朽原発の新たな審査は、従来実施されていた2つの審査を一つにし、審査の間隔を「10年」から「10年以内」としただけで、評価・点検・審査の中身はほとんど変わりがありません。
・事前評価書では、規制拡大の理由に、60年以降の審査が創設されることを挙げるのですが、これは、安全規制としての運転期間制限を撤廃するという規制緩和により、やらざるをえなくなったというだけのものです。
<意見例>
規制委は法改定の事前評価書において、60年以降の審査が創設されるなどの理由で、今回の法改定が規制の緩和ではなく拡充であるとしているが、新たな審査は、審査の間隔を「10年」から「10年以内」としただけで、評価・点検・審査の中身は、従来のものとほとんど変わりがない。60年以降の審査は、安全規制としての運転期間制限を撤廃するという規制緩和により、やらざるをえなくなったというだけで、全体としてみれば大幅な緩和となる。規制委は虚偽の評価を取消し、議論をやり直すべきである。
3.規制委に劣化が進んだ危険な原発を見つけて廃炉にすることができるのか
・国会審議において西村経産大臣は、繰り返し、規制委の厳格な審査で不合格になれば原発の運転ができなくなるのだから問題ないと答弁していました。しかし、これまでは、40年ないし60年の年限により廃炉となっていたものが、規制委が危険な原発を見つけて不合格にすることを行わない限りは、安全上の観点から原発を廃炉にすることができなくなります。
・果たして、そのようなことが規制委に可能なのでしょうか。規制委はバックフィット制度での実績を強調します。規制の強化や審査のやり直しなどでバックフィット命令をかけた事例は12例ありますが、いずれも事業者と協議のうえ、対応を終えるまでの猶予期間を設定しており、即時の停止命令を出したことはありません。
<意見例>
安全規制としての運転期間制限が撤廃されたが、劣化が進んで危険な老朽原発を確実に廃炉にするための仕組みがない。運転期間の制限を撤廃すべきではない。バックフィットの経験からも、原子力規制委員会が、劣化が進んで危険な老朽原発を見つけ、訴訟リスクを負ってでも原発の廃炉を迫る決断力と実行力をもっているとは到底思えない。
4.未知なる劣化を見つける仕組みがない
・安全規制としての運転期間制限がなくなる以上、「設計の古さ(非物理的な劣化)」への対応が不可欠となります。しかし、新たな審査基準に入ったのは部品のサプライチェーンの確認だけです。「欠け」(未知なる劣化)を見つける仕組みについては、新しい審査には盛り込まず、年1回程度の規制委側と事業者側との協議の場を設けることでお茶を濁しました。
・「欠け」(未知なる劣化)への対応については、検討チーム会合において、既知の劣化事象への対応だけでよしとするのは安全神話だとの触れ込みで議論をはじめ、石渡委員と伴委員は、規制の中で行うべきとの意見を出しました。しかし、事業者にとって不利な情報を引き出すためにも話し合いの場を持つしかないということになりました。まさに「規制の虜」です。
・新しい審査基準においても、対象となる劣化事象は従前と同じく・低サイクル疲労・中性子照射脆化・照射誘起型応力腐食割れ・2相ステンレス鋼の熱時効・電気・計装品の絶縁低下・コンクリート構造物に係る強度低下及び遮蔽能力低下の6つに限られています。6つ以外の事象については評価する義務はなく、事業者の自主的な判断によります。6つから外れている事象により劣化が進行しているかもしれません。
<意見例>
安全規制としての運転期間制限がなくなるのであれば、「設計の古さ(非物理的な劣化)」への対応が不可欠であり、特に「欠け」(未知なる劣化)を見つける仕組みを規制・審査の中に位置付ける必要がある。しかし、新たな審査基準案に盛り込まれたのは、サプライチェーンの確認だけであり、「欠け」(未知なる劣化)を見つける仕組みについては、年1回程度の規制委側と事業者側との協議の場を設けることでお茶を濁した。このような審査基準案を認めることはできない。
5.点検箇所から外れていて見落とす場合がある
・高浜4号機の制御棒落下事故は、点検箇所から外れた場所の電気ケーブルで劣化が進行して生じました。初期の施工不良と経年劣化が重なって生じたとされています。事故が起こらないとわからない状況です。
<意見例>
高浜4号機の制御棒落下事故は、点検箇所から外れた場所の電気ケーブルにおいて、初期の施工不良と経年劣化が重なって生じたとされている。こうした事故については、事故が起こらないとわからない状況だが、それでは審査の意味がない。初期の施工不良が重なった場合の劣化事象に対する対応を検討する、電気ケーブルの全線での点検を実施するなど、点検方法や範囲について大幅な見直しが必要である。
◆原子炉圧力容器の脆化監視について
1.監視試験片が足りなくて試験ができなければ不合格とすべき
・評価が義務付けられている6つの劣化事象の一つである原子炉圧力容器の中性子照射脆化の監視について、脆化の程度を確認し将来の脆化を予測するために運転開始時に入れた監視試験片のカプセルをときどき取り出して破壊試験を行っていますが、設計時の想定を超える長期運転により、監視試験片が足りなくなるという問題が生じています。
・国会で辻元議員が5月23日の参議院連合審査会でこの問題を取り上げました。辻本議員は、川内原発1号炉では、運転開始時に6つ入れた監視試験カプセルのうち、既に5つが取り出されていること、東海第二原発では運転開始時に4つ入れた監視試験カプセルすべてが既に取り出されたことを確認したうえで、この先どうするのかと問いました。規制庁は、東海第二原発については再生試験片を入れたと答弁。辻元議員が、熱影響部は幅5ミリほどしかなく、再生試験片を作成するはできないのではと問うと、規制庁は、今年1月の意見交換の場で、事業者(ATENA)から、熱影響部について再生試験片を作成するのは困難との報告を受けたと答弁しました。監視試験片は母材と溶接部、溶接の熱影響部の3つの部位があります。東海第二原発に入れた再生試験片は母材だけであることがわかっています。
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?swd=2381207
・新たな審査基準案を検討した高経年化検討チームの会合において、この問題が直接的に議題になって議論されたことはありませんでした。参加した事業者(ATENA)のプレゼン資料の最後にある今後議論すべき事項の中に「◆小型試験片(マスターカーブ法含む)による評価方法」をあげているだけです。
<意見例>
中性子照射脆化について、設計時の想定を超える長期運転により、監視試験片が足りなくなる問題が生じている。今年5月23日の参議院連合審査会の場で、川内原発1号炉では、運転開始時に6つ入れた監視試験片のカプセルのうち、既に5つが取り出されていること、東海第二原発では運転開始時に4つ入れた監視試験カプセルすべてが既に取り出されたこと、東海第二原発については再生試験片を入れたが、熱影響部については幅5ミリほどしかなく、事業者(ATENA)から、再生試験片を作成するのは困難との報告を受けていたことが明らかになった。東海第二原発には、現状で母材の再生試験片しか入っていない。川内原発1号炉は残り1カプセルだが、これの取出し時期について、九州電力は明確な計画を示していない。高経年化した原発の安全性を確保するために、運転開始30年以降も、母材、溶接金属、熱影響部のそれぞれについて、試験及び評価を継続的に行う必要がある。そのことを審査基準の要求事項に明記したうえで、監視試験片のカプセルの不足によりそれができない場合は不合格とすべきである。東海第二原発は運転期間延長認可を取消すべきである。川内原発1号炉についても運転期間延長認可をすべきではない。
2.監視試験カプセルの取出し時期について高経年化に対応した規定がない
・高経年化検討チームの会合において、事業者は監視試験カプセルの取出しを、暦年ではなく照射量に応じたものにすることを要求しました。現状(運転期間延長認可運用ガイド)では、「運転開始後30年を経過する日から10年以内のできるだけ遅い時期」「運転開始後40年を経過する日から10年以内の適切な評価が実施できる時期」に、監視試験カプセルを取り出し試験を行うことを要求しています。事業者はガイドのこの要求を削除し、電気協会の規格「原子炉構造材の監視試験方法」JEAC4201を採用するように求めました。
・規制委側はこれに応じ、新たな審査書案15頁に、「③ 一般社団法人日本電気協会「原子炉構造材の監視試験方法」(JEAC4201)等に基づき、運転を想定する期間において劣化を評価できる適切な時期に監視試験を実施する方針が示され、同方針に基づき長期施設管理計画の期間中に実施する必要がある監視試験に関する措置が具体的に定められていること。」と記載しました。
https://www.nra.go.jp/data/000439952.pdf
・現在審査で用いられているのは、福島第一原発事故前の2007年に策定されたJEAC4201-2007ですが、事業者のプレゼン資料にはそのJEAC4201-2007にある定格負荷相当年数による指標の表が掲載されています。それによると、関連温度移行量の予測値が56~111度の場合、最小カプセル数は4個、取り出し時期は①3年、②6年、③15年、④相当運転期間、の4回となっています。15年目に取り出したあと、どこかでもう1回取り出すだけで、それ以上はやらなくてもよいことになります。相当運転期間として推奨されているのは定格負荷相当年数で32年です。稼働率80%を想定した場合、定格負荷相当年数の32年は、暦年で40年に相当します。この規格は設計寿命40年を想定してつくられています。60年超運転に対応することはできません。
https://www.nra.go.jp/data/000424257.pdf
<意見例>
規制委は、監視試験カプセルの取出しについて、暦年ではなく照射量に応じたものにするようにとの事業者側の要求に応じ、運転期間延長認可運用ガイドにある監視試験カプセルの取出し時期についての記載を削除し、審査基準案に「一般社団法人日本電気協会『原子炉構造材の監視試験方法』(JEAC4201)等に基づき、…適切な時期に監視試験を実施する方針が示され、同方針に基づき…監視試験に関する措置が具体的に定められていること。」と記載した。しかしJEAC4201-2007にある指標は、設計寿命40年を想定して策定されたものであり、これに依拠することはできない。また、事業者及び規制委は、監視片の位置が炉心に近く、照射速度が大きいことから、60年超の「実データ」が既に得られていることを強調するが、照射速度が大きい場合、通常に比べて脆化の程度が小さくなり、過小評価となることが明らかになっている。規制委として、運転開始30年の経過後少なくとも10年以内毎の監視試験カプセルを取出しての試験及び評価を母材、溶接部、熱影響部のそれぞれについて継続的に実施するなど審査基準において要求すべきである。
3.古くなった電気協会の規格を使い続けるのか
・中性子照射脆化の監視に際して、規制委は電気協会の「原子炉構造材の監視試験方法」JEAC-4201-2007と「原子力発電所用機器に対する破壊靭性の確認試験方法」JEAC4206-2007の2つの規格を用いています。現在使われているものは、いずれも福島第一原発事故前の2007年に策定された2007年版です。
・「原子炉構造材の監視試験方法」JEAC-4201は監視試験片の数や種類を定めたり、シャルピー試験や脆化予測式から脆性遷移温度を求めたりするものです。2011年に予測式の誤りが指摘され、改定が求められていますが、改定が行われず、誤った規程のまま審査が行われています。
・「原子力発電所用機器に対する破壊靭性の確認試験方法」JEAC4206は、破壊靭性試験をもとに、加圧熱衝撃評価を行うためのものです。照射による脆性遷移温度の上昇量を破壊靭性値の温度シフト量に用いるやり方が正しくないことが明らかになっています。電気協会は、マスターカーブ法を取り入れたJEAC4206-2016(2016年版)を作成しましたが、十分な信頼性がないとして、規制委は採用を見送りました。問題の多い2007年版がそのまま用いられています。
<意見例>
中性子照射脆化の監視に際して、規制委はJEAC-4201-2007とJEAC4206-2007の2つの規格を用いているが、いずれも福島第一原発事故前に策定されたものであり、JEAC-4201-2007については、予測式の誤りが指摘されており、JEAC4206-2007については、照射による脆性遷移温度の上昇量を破壊靭性値の温度シフト量に用いるやり方が正しくないことや、マスターカーブ法が取り入れられていないなど、不備が明らかになっている。「設計の古さ」の一つとして規格・規定の古さも問題にすべきである。直ちに現状の規格の検証を行い、不備が解消されない限りは、老朽原発の運転を止め、審査を中止すべきである。
4.関電の老朽炉について加圧熱衝撃評価の再検討を実施すべき
・関西電力高浜1号炉、2号炉、美浜3号炉について、運転開始時に入れた監視試験カプセルは8つですが、破壊靭性試験の試験片は、4つのカプセルには母材だけ、残りの4つのカプセルには溶接金属だけが入っており、交互に取り出して試験を実施しています。
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2023/pdf/20230726_1j.pdf
・高浜1号炉についてみると、①運転開始2年に母材、②10年に溶接金属、③28年に母材、④35年に溶接金属、⑤47年に母材となっています。母材、溶接金属のそれぞれでみるとおよそ25年毎の取出しとなります。
・母材については、運転開始30~40年の間に取り出した形跡がなく、「運転開始後30年を経過する日から10年以内のできるだけ遅い時期」に取り出し試験を実施すること要求する現状の運転期間延長認可運用ガイドに違反しているおそれがあります。
・母材と溶接金属をセットで考えると、高浜1号炉は運転開始40年で2セット半しか取出し試験を実施しておらず、これはJEAC4201-2007による指標からも大きく外れていると思われます。
・関電は、破壊靭性試験に基づく加圧熱衝撃評価において、母材によるデータと溶接金属によるデータを混ぜて使っていますが、別々に扱うべきものです。
<意見例>
中性子照射脆化について、関西電力の高浜1号炉、2号炉、美浜3号炉については、これまでの加圧熱衝撃評価について疑義があり、再稼働を止めたうえで再検討を実施すべきである。関西電力高浜1号炉、2号炉、美浜3号炉について、運転開始時に入れた監視試験カプセルは8つだが、破壊靭性試験の試験片は、4つのカプセルには母材だけ、残りの4つのカプセルには溶接金属だけが入っており、これを交互に取り出している。高浜1号炉についてみると、①運転開始2年に母材、②10年に溶接金属、③28年に母材、④35年に溶接金属、⑤47年に母材となっている。母材、溶接金属のそれぞれでみるとおよそ25年毎の取出しとなる。母材については、運転開始30~40年の間に取り出しておらず、「運転開始後30年を経過する日から10年以内のできるだけ遅い時期」に取り出し試験を実施すること要求する現状の運転期間延長認可運用ガイドに違反しているおそれがある。母材と溶接金属をセットで考えると、高浜1号炉は運転開始から2セットしか取出していないことになるが、これはJEAC4201-2007による指標からも大きく外れている。また、関電は、破壊靭性試験に基づく加圧熱衝撃評価において、母材によるデータと溶接金属によるデータを混ぜて使っているが、別々に扱うべきものである。
5.BWRの加圧熱衝撃評価を不要としてよいのか
・高経年化検討チームの会合において、事業者はもう一点、BWR(沸騰水型原子炉)では加圧熱衝撃評価を不要とすることを要求しています。
・事業者はこの要求について4月13日の第4回会合においてプレゼンを行いましたが、規制委側は3月23日の第3回会合で既に取り入れる対応案を提示していました。審査基準案の要求事項に「加圧熱衝撃により原子炉圧力容器が損傷するおそれのある場合、」の文言を追加し、損傷のおそれがないことが示された場合は加圧熱衝撃の評価は必要ないとするものです。規制委側が率先して要求に密室で応じていたことになります。
・評価を不要と主張するプレゼンにおいて、加速照射データを無条件に通常のデータと同列に扱っているのも問題です。敦賀原発1号炉や福島第一原発のデータから、加速照射の場合、通常に比べて同じ照射量で比較すると脆化の程度が小さく、過小評価となることが明らかになっています。このことはPWR(加圧水型原子炉)にも関係します。規制委山中委員長は、PWRの川内原発の4倍の加速照射データを例にあげて、60年超の実データは既に得られていると答弁し、60年超えの審査が可能である根拠にしています。
<意見例>
中性子照射脆化について、規制委は、BWR(沸騰水型原子炉)では加圧熱衝撃評価を不要として欲しいとの事業者の要求に応じ、審査基準案の要求事項に「加圧熱衝撃により原子炉圧力容器が損傷するおそれのある場合、」の文言を追加したが、これを撤回すべきである。高経年化検討チームの会合では、第4回会合の事業者側のプレゼンよりも先に第3回会合で規制委側の改定案が提示された。規制緩和の要求に規制委が密室で応じていたことになる。評価を不要と主張するプレゼンにおいて、事業者は、加速照射データを無条件に通常のデータと同列に扱っているが、敦賀原発1号炉や福島第一原発のデータから、加速照射の場合、通常に比べて同じ照射量で比較すると脆化の程度が小さく、過小評価となることが明らかになっている。こうした点を含め、第三者の専門家の検討などもなしに事業者側の要求に一方的に従うことは許されない。