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監視ニュース20210326

◆東海第二原発運転差止め勝利判決!

水戸地裁において、東海第二原発の運転差止めを認める画期的な判決が出ました。原告・弁護団はじめ尽力された皆さんに心から感謝します。

判決が差止めを認めた理由は、東海第二原発の広域避難計画の実効性にかかわるものでした。大地震などを想定した現実的な避難計画がなければ住民の安全は守れない、しかしそのような避難計画はない、だから運転してはならないと断じたのです。

◆避難計画を安全上欠落することがあってはならないものと位置づけた

判決が画期的であることのひとつは、避難計画の問題を深層防護の第5の防護レベルとして、耐震設計や重大事故対策などと同等に、安全上欠けることがあってはならないものと位置付けたことにあります。深層防護とは、安全に対する脅威から人を守ることを目的としていくつかの障壁(防護レベル)を用意して、各々の障壁が独立して有効に機能することを求めるもので、ある防護レベルの安全対策については、その前に存在する防護レベルの対策を前提としない(前段否定)ことが求められます。

例えば、第5の防護レベルについては、第4の防護レベルを前提とせず、はじめからこれが失敗して重大事故(炉心溶融事故)により放射能が放出された想定が要求されます。判決は「深層防護の第1から第5の防護レベルのいずれかが欠落しまたは不十分な場合には、発電用原子炉施設が安全であるということはできず、周辺住民の生命・身体が侵害される具体的危険があると解すべき」としています。

◆避難計画が策定されてさえいればよいとの被告を批判

避難計画については実効性の確認どころか、未完成で不備があることを地方自治体などが認めているにもかかわらず、「避難計画は原発が動いていてもいなくても必要だ、だから避難計画と再稼働とは無関係だ」といった屁理屈で再稼働が認められてきました。再稼働すれば原発の危険性は格段に、桁外れに上がります。避難計画と再稼働が無関係なはずはありません。

判決は、「避難計画について、防災に終わりはなく、避難計画策定後、同計画に基づく防災訓練の実施等による検証等を含め、不断に改善し強化されていくべき性質のものである」との被告(原電)の主張に対し「放射性物質の生命、身体に対する深刻な影響に照らせば、何らかの避難計画が策定されてさえいればよいなどといえるはずもなく、避難を実現することが困難な避難計画がされていても、深層防護の第5の防護レベルが達成されているということはできない」と批判しています。この批判は、原電と同じ主張をしてきた国や地方自治体にも向けられています。さらにこれまでの原発運転差止め裁判の多くが、避難計画の実効性について不合理であることを認めながら、避難計画についてはとりあえずありさえすればよいとし、この問題で差止めを認めてこなかったことに対する批判でもあります。

◆大規模地震等を想定した実現可能な避難計画と実行する体制を要求

判決は、「少なくとも…原子力災害対策指針による段階的避難等の防護措置が実現可能な計画及びこれを実行しうる体制が整っていなければならない」としさらに「大規模地震、大津波、火山の噴火等の自然現象による原子力災害を想定」することを要求しています。

しかし東海第二原発30キロ圏の94万人の避難計画について、現状では、「大規模地震により住宅が損壊した場合についての屋内退避について記載がない…被災し通行不能となった道路等の情報提供手段については今後の課題となっている…自然災害などにより避難経路が使用できない場合の複数の避難経路の設定はなされていない…複合災害時におけるモニタリング機能の維持、災害対策本部機能の維持及び第二の避難先の確保を今後の課題としている…」といった状況で、「実現可能な避難計画及びこれを実行しうる体制が整えられているというにはほど遠い状態にあるといわざるをえない」というのです。

◆広域避難計画の実効性と再稼働についての申し入れ行動

この間、私たちは各地の団体と協力しながら、広域避難計画の実効性が確認されないことから原発の再稼働を認めないよう求める申し入れ行動などを行ってきました。

昨年10月には茨城県への、11月には水戸市への要請行動を行いました。このときは、コロナ対策により必要とされる避難所でのスペースの確保について対策がなされていないことが問題になりました。コロナ対策として、避難所での一人当たりのスペースを一人当たり2平米から4平米以上へ、少なくともいまの2倍にする必要があります。さらに広域避難計画では複合災害への対応のために第二の避難先を設定しなければならず、さらに倍の避難所が必要となります。都合4倍にしなければなりません。茨城県の原子力安全対策課の担当者は、94万人もの避難先を設定するので手一杯、これ以上避難先を増やそうとすると避難先が山形県や新潟県や長野県にまで及びとても無理だと悲鳴をあげていました。

◆広域避難計画の実効性の問題は全国の原発再稼働問題に直結する

昨年12月1日には、東京、茨城、千葉に加え、関西・福井、仙台で避難計画の問題に取り組む団体の皆さんが集まり、九州や新潟からはオンラインで参加する形で、コロナ禍における広域避難計画の実効性と屋内退避の被ばくリスクをテーマに院内集会と政府交渉が行われました。

福井県では、40年を超える老朽炉の再稼働が問題になっています。第二の避難先は設定されていますが、コロナ対策として必要とされる避難所の増設が進んでいません。大規模地震等の自然災害を前提として実行可能な避難計画が策定されている原発はどこもありません。判決は全国的な意義を持っています。この判決を活かし、東海第二原発の再稼働を止めましょう。全国の原発稼働と再稼働を止めていきましょう。