みなさまへ
防災指針についてパブコメ意見を提出しました。
原子力規制を監視する市民の会 阪上 武

*****************************
<意見>
プルーム通過時の被ばくをさけるための防護措置を実施する地域(PPA)についての記載を削除しないこと。UPZ外についても、安定ヨウ素剤の服用を実施できるようにし、プルーム通過前に服用できるように、すべて事前配布とする。その旨、指針の「安定ヨウ素剤の予防服用」の項に明記すること。

<理由>
福島県民健康調査において、小児の甲状腺ガンが多発しており、被ばくとの関係について今後も検証が必要とされている。放射線プルームによるヨウ素の内部被ばくを避けなければならないというのが、福島第一原発事故の大きな教訓である。プルームの対応については、屋内退避だけでは不十分であり、安定ヨウ素剤の服用を合わせて実施したり、プルーム通過前に避難させるなどの措置が必要である。

福島第一原発事故において、放射性プルームによるヨウ素の内部被ばくの国連科学委員会による推計では、甲状腺の等価線量100ミリシーベルトの範囲が原発から30kmを超えて広がっており、IAEAの安定ヨウ素剤服用の基準である等価線量50ミリシーベルトでは、さらに遠い範囲まで広がっていることは明らかである。

「緊急時の被ばく線量及び防護措置の効果の試算について」(平成26年5月28日原子力委員会)における試算が屋内退避で十分であるとの根拠とされるが、ここではセシウム137で100テラベクレルという、福島第一原発事故の100分の1程度の規模で想定されている。セシウム137で100テラベクレルという事故の規模は、重大事故対策についての安全目標であり、事故をこの規模で抑えるための対策を徹底するための目標値であって、これ以上の規模は発生しないというものではない。これを防災に用いるのは適当ではなく、安全神話を復活させるようなものである。防災や防護措置を検討する場合には、少なくとも福島第一原発事故規模の事故を想定すべきであり、その場合には、UPZ外においても、安定ヨウ素剤の服用や避難などの追加的防護措置を検討する必要がある。また、そのためにもPPAの検討について削除すべきではない。

安定ヨウ素剤の服用については、プルーム通過前の服用が必要であり、プルーム通過に間に合わせるためにも、PAZ外についても事前配布とすべきである。

<意見>
現行規定にある記載「なお、国は、例えば緊急時モニタリングによって得られた空間放射線量率等の値に基づくSPEEDIのような大気中拡散シミュレーションを活用した逆推定の手法等により、可能な範囲で放射性物質の放出状況の推定を行う。また、原子力事故の拡大を抑えるために講じられる措置のうち、周辺環境に影響を与えるような大気中への放射性物質の放出を伴うものを実施する際には、気象予測や大気中拡散予測の結果を住民等の避難の参考情報とする。」を削除しないこと。

<理由>
「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた防護措置とSPEEDIの運用について」(原子力規制委員会・原子力規制庁 2015年3月4日:以下「教訓を踏まえた防護措置とSPEEDI」)に「SPEEDI等によって推定できるとした予測線量をもと」にした「防護戦略は、実際には全く機能しなかった」としているが、ソースタームが得られなかった原因と対策、逆推定による予測結果と運用について、いかにすればSPEEDIを有効に運用できるのかという視点での検証作業を、関係者を集めた上で公開の場で丁寧に実施すべきであり、これなしに「全く機能しなかった」と決めつけるべきではない。

「教訓を踏まえた防護措置とSPEEDI」には「IAEA等の国際基準の考え方に則り、初期対応段階において講ずべき防護措置及びその判断基準をあらかじめ定めるとともに、施設の状態に基づき、放射性物質の放出の前から予防的な防護措置の実施することとしている」とあるが、原子力安全委員会専門部会による文書に「IAEAが現在提示しているOILは地上に沈着した放射性核種に対して定められたもので、プルームに対しては定められていない。」「GSG-2の29頁の脚注の理由によりプルームに対応するためのOILは与えられておらず、事故発生施設でのEALやスタックモニター結果等に対するOILの設定を要請している」(「原子力施設等の防災対策について」の見直しに関する考え方について 中間とりまとめ」平成24年3月9日原子力安全委員会原子力施設等防災専門部会防災指針検討ワーキンググループ)とあるように、IAEAもプルームの対応については、EALやスタックモニター結果等に基づく判断基準を別に定める必要があるとしている。

福島県民健康調査において、小児の甲状腺ガンが多発しており、被ばくとの関係について今後も検証が必要とされている。放射線プルームによるヨウ素の内部被ばくを避けなければならないというのが、福島第一原発事故の大きな教訓である。プルームの対応については、屋内退避だけでは不十分であり、安定ヨウ素剤の服用を合わせて実施したり、プルーム通過前に避難させるなどの措置が必要である。

「教訓を踏まえた防護措置とSPEEDI」には「Q2:施設の大規模な損壊やフィルタード・ベントなどによって、スタックモニタやモニタリングポストで放出が検出された場合には、SPEEDIによる拡散予測を活用すべきではないか。」という地方公共団体からの問いに対して「現行の原子力災害対策においては、施設の状態に基づき、放射性物質の放出の前から、PAZ内の避難やUPZ内の屋内退避等を行うこととしており、予防的な防護措置を講ずることとしていることから、SPEEDIにおける予測結果を用いる必要がありません。」と回答しているが、プルームに対して、被ばくのUPZ内外の屋内退避の指示、安定ヨウ素剤の服用の指示、避難の指示を効果的に行うためにも、少なくとも逆推定による放射性物質の放出状況の推定と住民への情報提供について実施させるべきである。

<意見>
表3「OILと防護措置について」の※2の記載のうち、「OIL2の基準を超えたときから概ね1日が経過した時点の空間線量率(1時間値)が」を削除する。

<理由>
改定案では、OIL1の毎時500マイクロシーベルトに近いが、それを超えない非常に高い値が継続した場合に、避難が可能な場合でも、住民は1日経過しなければ避難できないとも読めてしまい、PAZ外の住民に対し、1日で10ミリシーベルトを超えるような非常に高い被ばくを強いるおそれがある。指針が住民を縛り付け、被ばくを強要するようなことはあってはならない。

<意見>
この指針が、モニタリング結果の公表や避難指示、安定ヨウ素剤の配布などについて、地方公共団体による自主的な、追加的な防護措置の妨げにならないよう、その旨明記すること。

<理由>
地方公共団体による自主的な、追加的な防護措置の実施を妨げるべきではない。