広島高裁が伊方原発3号機の差止めを認める画期的な判断を下しました。
原告、弁護団はじめ尽力されたみなさんに心から敬意を表します。以下、原子力規制を監視しようニュースからです。

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伊方原発3号機差止めを受けて
大飯・玄海・川内原発の火山再審査を!
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◆原発の運用期間中に破局的噴火が発生する可能性が問題に

広島高裁が差止めを認めたポイントは、裁判所が、新規制基準で火山の審査に用いられる火山影響評価ガイド(火山ガイド)の厳格な(というか普通の)適用を求めたことにあります。
火山ガイドは、立地評価において、原発の運用期間中に火砕流が到達する可能性が十分に小さいことを示すことを電力会社に要求しています。これができなければ「立地不適」となります。伊方原発の場合、阿蘇カルデラによる破局的噴火の場合、火砕流が到達する可能性がありますから、四国電力は、運用期間中に破局的噴火が発生しないことを示さなければなりません。裁判で原告側は、専門家の論文などから、破局的噴火が発生する可能性が否定できないとの証拠を数々提出しました。裁判所の判断は、科学的知見は、発生するとも、発生しないとも十分に示すことができない状況にあるというものでした。

◆火山ガイドの普通の適用を求めた

川内原発の運転差止めを求める裁判で、福岡高裁宮崎支部は、この問題で「社会通念」を持ち出し、破局的噴火は、被害は甚大な一方で発生頻度は低く、社会通念上は無視してもよいという強引な理屈で、火山ガイドをねじまげ、運用期間中に破局的噴火が発生することが立証されない限り、立地不適とはならないと結論しました。
これに対し広島高裁は、火山ガイドは、さまざまな分野の専門家が、社会的にどの程度のリスクを許容するのかを含めてつくられており、社会通念も含んでいるとし、文字通りの適用を求めました。すなわち、電力会社が、運用期間中に破局的噴火が発生する可能性が十分に小さいことを立証しなければならない、そうでない限り立地不適とすべきだと。

◆川内・玄海原発は運転できない

その場合、運転中の川内原発と、神戸製鋼事件で再稼働が延期になっている玄海原発は、そのまま同じ理屈で立地不適となります。
玄海原発は、伊方原発と同じ、阿蘇カルデラの破局的噴火による火砕流の到達範囲にあります。
川内原発は、姶良カルデラ(桜島)、阿多カルデラ(開聞岳)、加久藤・小林カルデラ(霧島)の3つものカルデラの破局的噴火による火砕流の到達範囲にあります。
いずれについても、「原発の運用期間中に破局的噴火が発生する可能性が十分に小さいこと」が、九州電力により立証されてはいません。直ちに止め、火山審査をやり直すべきです。

◆火山灰の濃度・層厚についても再評価を要求

広島高裁の決定は、火山灰評価における火山灰の濃度・層厚についても、想定する火山噴火の規模が大きくなることから、再評価が必要だとしています。
火山灰濃度については、今行われている規則改定により、従来の100倍規模に引き上げられますが、火山噴火の規模が大きくなれば、改定により想定した値(伊方原発の場合、約3.1グラム/立方メートル)でも過小評価になると指摘しています。

◆大飯原発についても再審査が必要

玄海原発と同じく、神戸製鋼事件で再稼働が延期となっている大飯原発では、鳥取県の大山(だいせん)の噴火が、火山灰評価の対象となっています。関西電力は、比較的規模が小さい噴火だけを対象とし、層厚10センチ、その場合の火山灰濃度が、改定後の値でも約1.5グラム/立方メートルとなっています。
ところが、火山灰の濃度改定の際に規制委が設置した検討チームに外部専門家として呼ばれた産業技術総合研究所の山元氏が、最近、大山の過去の噴火による火山灰分布が、これまでの文献では大幅な過小評価であったことを明らかにする論文を書きました。規制委はこれを研究対象としていますが、審査に使おうとしません。山元氏の論文に従うと、大飯原発の火山灰は、少なくとも層厚50センチの想定が必要です。火山灰濃度も大幅に上がります。姶良カルデラや阿蘇カルデラの破局的噴火による影響も考慮しなければなりません。
いずれにしろ、火山審査のやり直し、再評価が必要です。それがない限り、再稼働は認められません。

原子力規制を監視する市民の会